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ダークサイドFILE No.15

猫に九生あり

作者 DarkStar


「どうせ、あたしなんて、生きていたって・・・・・」
誰もいない夜の学校、その屋上に佇む一人の女生徒。

クラスでのけ者にされている女の子
その陰湿ないじめに耐えられず今日ついに、
自殺すべく、夜の学校に忍び込んだのだった。

「・・・・・ここから、飛び降りたら、きっと・・・・」

「ねえ、貴女、死んじゃうの?」

「え?」
誰もいないはずの屋上に自分以外の声
しかし、声はすれども、姿は見えず。

「ねえ、死ぬのなら、・・・・・
 貴女の体。・・・・・あたしに頂戴。」

「誰?、誰なの?」
女の子が、周りを見渡すが、人の気配はない。

「あたし・・・・ううん、あたし達ってね。・・・・・
 捨てられちゃったの・・・・いま、体が無くて・・・・困ってるの」
 少女を無視して話を続ける者・・・。
 
「どこ・・・・どこなの・・・・」
頭を振ってもやはり誰も居ない。

「ミャーーーーーオ!!!!」
と暗闇の中で瞳を光らせる猫が現れる。

「ね、猫、まさか・・・さっきの貴女なの?
 ふふ、あたし何言ってるんだろう?」

自分のおろかな考えに笑いながらも、

「いいわよ。どうせ死ぬんだから、あなたに
 この体、あげる。」

「ふふ、・・・・・じゃあ、頂戴。」

という声がしたと思うと、猫の姿がすーっと消えていく。

「あれ? あの猫。どこいったの?」

「え、あ、あ、ああああ
 なに、何、何なの、何?、何?」

突然頭を抱え、苦しみだす。女の子。

「あああああああああああああああああああああ」

女の子の声が辺りに響き渡る。

月明かりに浮かぶシルエット、
彼女の腰の辺りから細長いものがゆらゆらと揺れていた。

・・・・・・・・・

次の日

「おはよー。」

「おはよう」

元気に挨拶を交わす、制服姿の女生徒達

「はは、おはよう、梢ぇ・・・・・」

「おはよう、根暗ちゃん。」

ふざけするようて挨拶する生徒達に

声を掛けられた本人は、

「・・・・・おはよう・・・」
いつもの弱弱しい態度から一変
怖さまで感じるほどの梢の姿。

「な、・・・・何よ・・・あのコ・・・。」

いつもの違う印象に戸惑うクラスメイト達

だが、彼女の変貌はそれだけではなかった。

授業中、黒板に書いた問題を
当てようと・・・周りを見渡す教師。

「この問題、・・・・・はい、皆本さん答えて見て・・・・」

「はい・・・・。」

黒板の前に立ち、チョークを持った梢

カツ、カツ、カツ・・・・・・

黒板には、公式が並び、
チョークの音が止み、手が止まると

「・・・・・できました。」

「す、すごいわ、皆本さん。正解よ。」

いつも赤点の梢がすらすら答えるその姿に
感動すら覚える教師を尻目に

「はい。・・・・」

顔も向けず、そのまま席に戻る梢。

だか、彼女の変化はそれだけにとどまらなかった。

体育のマット運動、

宙を舞い、体を縦に一回転させながら、
横方向にもひねりを加え、背中を向けてスタートした
生徒達と対面するような向きになり、
綺麗にマットに着地する梢。

「え、い、今なん回転した?」

「ねえ、ねえ、アレなんて技?」

余りの美しいその技に他の生徒達が、
梢を取り囲む。

(・・・普通に飛びすぎた。
 もっと人間らしくやるんだった・・・・・・・。)

と思う梢、そんな彼女の姿をじっと見つめる一人の少女。

(・・・つまらない・・・・・
 早くあの仔達を何とかしてあげないと・・・・・)
一人佇み、考えを巡らす梢に

「あの~、み、皆本さん。」
と声を掛ける一人の女の子。

「・・・何?」

「す、すごいね~。どうしちゃったの?
 いつもの皆本さんじゃないみたい。」
 
「・・・・・そう?」

クールに答える梢、
その様子に彼女はますます、ヒートアップしてくる。

「ねえ、お願い、どうしたら貴女みたいに
 変われるの、ねえ、教えてよ。」
 
彼女も、いじめを受けているわけではないが、
勉強もスポーツも苦手な自分に
強いコンプレックスを持っていた。

そんな彼女が
突然変貌した梢の姿を目の当たりにして、
その姿に強い憧れを抱いたのだ。

「貴女、あたしのようになりたいの?」

「うん。そうよ。あたし、貴女みたいになりたい。」
真剣に梢を見つめる女の子。

そんな姿に梢は笑みを浮かべながら、

「そう。じゃあ・・・・・」


・・・・・・・・・・・

「さあ、上がって・・・・・」

「お、お邪魔します。」

梢の家に連れてこられた少女。

部屋の前で、梢はくるりと回り、

「あたしの秘密。貴女にも、教えてあげる」

というと、ドアを開け、
中に入っていこうとする少女を・・・
後ろから部屋の中へ突き飛ばすと、
そのままドアを閉め鍵を掛けてしまう。


「え、な、なに、あ、皆本さん。どうしたの、
 開けて、開けてよ。」

突然部屋に閉じ込められ、面をくらいながらも、
ドアノブをガチャガチャ回すがドアが開くことはなかった。

「ミャーーーーーーオ!!!」
静かな、部屋に自分とは違う甲高い声に
少女が振り向くと

一匹の猫が目の前まで歩み寄ってくる。

「ね、猫??」

しかし、よく見ると、薄暗い部屋のあちこちで
光る瞳。

「ど、どうして、こんなに猫が・・・・・
 み、皆本さん、これなんなの、なんなのー。」

異様な光景に恐怖し、
声を上げながら、ドアを叩く少女。

「ニャーーーーーーーーーーオ!!!」

と彼女の目の前にいた猫が姿をスゥッと
まるで幽霊のように消してしまうと。

「い、いや、何、何なの?」

不思議に思った彼女・・・しかし、
その思考はすぐに別の意識に遮られた。

「な・・・・に、何・・・あたまが、変、変なのぉ」

頭を引っ掻き回される感覚、
手で両耳をふさぐ様に頭を抱えると、

「なんか、・・・にゃにかが、あたしの中に、中に入ってくるのオオ」

全身を覆う寒気、遠のくような意識、
未知の恐怖に少女は体をドアに持たれかけながら、
ドアを叩き叫ぶ。

「皆本さん、皆本さん開けて、お願い!!、ここあけてよぉ。」

彼女のドアを叩く音はやがて、
ドアを引っ掻く音へと変わっていく、

「開けて、開けてよぉ、皆本さん!!!!
 ここいや、ここ、にやなの、にやあああああああ」

ドアの引っかき傷は、傷跡の深さと数を増していく。・・・

爪が鋭く尖った細長い指たちは、
肉球を備えた短い前肢に変わっていき、
そして頭から、毛に覆われた三角の耳がニョキっと飛び出し

制服のスカートから、細長い尻尾が生えてくると。

「に、やあ、ニャァ、にゃア、ニャア
 ニャアアア、ミャーーーーーオオオオ!!!」

牙を備えた口から、先ほどと同じ甲高い声を部屋中に響かせた。

・・・・・・・・・・

猫の鳴き声が聞こえたのを確認した梢がドアを開ける。
すると、そこにはブレザーの中に
三毛猫が服の中に埋もれている。

「どう? タマ?きぶんは?」

「ナオァアアアアアオオオオオオオ!!!!」
と猫が声を上げ、

体が大きくなり、全身の毛が薄くなっていく

頭部からは、獣毛とは違った太い毛があふれ、

ピンク色をした鼻は、色と形を変えて変化し、
数秒後には、さきほどの少女が裸で立っていた。

ただ先ほどと違うのは、人には存在しない臀部から伸びた
細長いもの・・・・尻尾がゆらゆらと揺れていた。

「最高よ。でも、このニ本足ってうまく立てないわね。」

立ち上がり、足元がふらふらしているのを長く伸びた尻尾でバランスを取り
やっと立っている少女。

梢に向けた少女の瞳は瞳孔が細く、
薄暗い部屋の中でも爛々と輝いている。

「そうだ。あたし、もう『タマ』じゃないわ。」

そう、いまの彼女は、野良猫『タマ』ではない。

「ごめんなさい。つい・・・・でも尻尾は隠しなさい。
 人間達に正体ばれたらどうするの?」

自分と同じ存在となった仲間に戸惑いながらも・・・。
不自然な姿のままでいる事を嗜める。

「そうね。本格的に二本足でちゃんと・・・・」
さすがの本人も、尻尾を出したままの姿は、
これからの生活に支障になると認識したのだろうか、

彼女の長い尻尾がお尻の付け根に
押し込まれるようになりながら短くなっていく。

「そうそう、背筋を伸ばして、立つの・・・・」
と梢は、二足直立のコツを教える。

「背中、イタ!!・・・・
 こ、この状態でいるの・・・結構つらいわ。」

今までの自分からすれば、無理な姿勢に思わず声を上げる。

「我慢しなさい。すぐに人間の体の方に慣れるわ。」

と言う梢の前で
背骨の当たりを抑えながら、ニ本の足で立って、歩き始める少女。

「うん、これでいい?」
そう聞いた少女に・・・。
「いいんじゃない。」

「・・・・『ミィ』おいで」
と猫の集団に向かって呼びかけると、
仔猫が一匹トコトコ寄っている。

「この女にも、妹がいるみたい。
 あんた人間になっても、あたしの妹がいいでしょ。」
 
 この女とは、かつては人としての意識を持った『この少女』の事。
 抱きかかえた『妹』の頭をやさしく撫でる。

「ミャーーー」
と鳴く仔猫に、

「ふふ、そうでしょ。じゃあ、梢。あたし帰るから」

『妹』からの肯定の言葉に笑顔を作りながら、
少女は、家に『帰る』事にした。

「ええ、一人で大丈夫?」

「へいきよ。」

とそのままの格好で出て行く少女。

「ちょ、ちょっとアンタ。その格好で帰るの?」

「何か変?。
 耳は出てないし、尻尾も引っ込んでるじゃない。」

「何いってるの?服着てないじゃない」

「これ、着るの?いやよそんなの。」

床に落ちたブレザーを指差しながら着るのを拒む少女

「なにいってるの、
 外は寒いわよ。毛のない姿で歩いたら、風邪ひくし、
 第一、そんな格好で外でたら、
 『警官』って人間に捕まるわよ。」

「ええ、そうなの!? 全く、不便ね人間って。」

といいながら、しぶしぶ服を着た少女

仔猫を連れて部屋を出て行く。

「ふふ、これで、明日には仲間がニ匹。
 さあ~、明日は何匹まで増やせるかしら・・・・。」

そういって、『梢』は不気味に微笑んだ。


・・・・・・・・・・・・・・

数日後、学校・・・・

「ニャアアアアアアアアアアア!!!」

教室を取り囲んだ大量の猫達が一斉に声を上げる。

「先生、せんせい、変なの、変にゃの、
 にやあ、ニャア、なあ、」

苦しむように体を抱え込む生徒達と、

「み、みんなどうしたの???、
 ア、あたしにも、何か、にゃんか入ってくる・・・・」

生徒達の変化に教壇の上でうろたえながらも、
直後に襲ってきた自分の体の変化に
恐怖する教師。


そんな中で幾人かの生徒達は、
ほくそ笑むように、『自らの意思』でその姿を変化させていく。


苦しみながら、頭から三角の耳とお尻から尻尾を生やす
生徒と教師、恐怖の顔はやがて思考を失った無表情なものへと変わり。

一人、また一人と、両手を床に付き、
甲高い声を上げていく。

「ニャァア、アアアアア!!!!」

「ミヤアアアアアアア!!!!!!」

猫たちであふれかえる教室。
無残にちぎれた服・・・や上履き
そして、爪で引っかかれた机たち。

「ふふ、まさか、こんなにうまくいくなんて・・・・」
と梢がつぶやき、
全身が毛で覆われ、猫の耳と尻尾を生やすと
四つん這いとなって、校舎内を掛ける。

『悪く思わないでね。人間さん達・・・・・・
 でも、最初にあたし達をこんな目に合わせた
 あんたたちが悪いんだからね・・・。』

梢と呼ばれていた少女の体を奪い取った猫・・・・・

彼女の・・・いや、彼女達の人間に対する復讐は
これで終わったのだろうか・・・。


海外では
『猫に九生あり』と言う諺があるほど生命力が強いとされ、

また日本でも、
長く生きて猫は、猫又になって妖怪化するとも言われる。


心無い人間たちに虐げられたり、理不尽に命を奪われた彼らが
人間たちに復讐にする事など
もしかしたら、至極たやすいのかもしれない・・・・。

	
おわり
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