乳牛娘たちの生活 その2 ~乳牛の群れ~
作者:DarkStar
獣人と呼ばれる獣たちの生態で特徴的なのはその繁殖能力である。例えば牛の獣人であるならば普通の牛との交配はもちろん、 人間との間にも子を成すことも可能であり、 これらの場合において子の性質は必ず母体の影響を受けるという点にある。つまり獣人の
とはいえ
そのため、
こうして種の繫栄を期待されて目覚めた草食の獣は、 自己の保護と種の存続の為に自然と群れを形成していく。
――――――
夕暮れ薄暗い教室に佇む2つの人影。静寂に包まれた空間の中でかすかに聞こえる息遣い。影達は抱き合い熱い口づけを交わす。
「ん、 ……
「あっ、
大きく実った2組の乳房が無理やり潰されたことによって反発し身体を遠ざけるも、 引き離されるのを拒む様により強く互いを求め合っている。
そんな完全に二人の世界に染まった部屋から一歩外へ出た廊下。そこには愛し合う少女達へ密かに熱い視線を送る者がいた。
細くしなやかな指先の片方はブレザーの上から豊かな胸を、 もう一方はスカートから覗く細くしなやかな太ももを。その両手は徐々に端から体の中心へ向かっていき、 それ伴って吐き出される息は熱を帯びていく。
「……静香ちゃん。……裕子ちゃん。」
頬を赤く染めながら少女が発した微かな声は、 寂しく空気に消えていく。
――――――
皆様ごきげんよう。
我が校では、
とは申しましても入学時の段階では、 大多数の新入生は普通の人間で、 残りは
こうして夏も近づいてきた先日の事、 最後の新入生が獣化覚醒を迎える事となり、 おかげ様で校内に残った人間の数がついにゼロとなりました。
この発表があるまでは、
それをお祝いして、 今日は新入生歓迎会が校内併設の牧場にて執り行われ、 全校生徒や教職員を含めた全頭が集っています。
「それにしても、 改めて考えるとすごい光景だな。」
「だよねー。わずか2, 3か月前にはありえなかったもんね。」
このお
「そうですわね。今ではお洋服を着ている方に、 違和感を感じますもの。」
そう
よく晴れた青空の下で
そんな和やかな雰囲気の中で会は進行してゆきます。
「では皆さん。これからは 『偽りのない姿で』 のんびりと過ごしてください。」
台上の生徒会長がマイクを切りって向き直ります。長いストレートな黒髪を振りながら、 手足の細く綺麗な指が中指を残して退化し、 黒く艶やかな蹄を伴って指から肢に変わります。スッとした小さなお鼻の先は、 鼻孔が拳の大きさまで肥大化しながら前歯と共に口元が前に突き出してお参ります。お顔の横側についたお耳も頭の上でピンと立つようになり、 つるつるとした体にわずかに生えていた産毛を駆逐するように綺麗な茶色の毛並みが全身を覆っていきます。
「ぶるるぅ、 ひひ、 ぶるる……。」
お腹とお尻に張り出した筋肉と共に、 毛足の長い尻尾が後ろに垂れ下がると、 2 本の足で台から華麗に飛び降りて、 まるで競技の障害を飛び越えた後のように美しく 4 本の足で綺麗に着地します。
首を振り頭を天高く掲げ。
「……ブルルル、 ヒヒィーイイイン!」
「ふー、 ふー。もう、 もぉんもぉ」
舌が伸びて口からはみ出ないよう頭蓋骨が変形して前に突き出すのが視界に入ります。瞳が顔の中央から側面の方に移動しているのでしょう視野が広がっていきます。
4つ足歩きには邪魔となる鎖骨が消失し、 支えを失った腕は前足として前方へ垂れ下がって、 手足の
手足に蹄が生え揃う頃、 両前足を地面につけ前のめりに体重を掛けます。お尻の中に短く収まっていた尾てい骨が伸びて尻尾になり、 それを守るようにお尻の筋肉も増え引き締まってゆきます。
こめかみから骨が付きだし引き伸ばされた皮膚と共に斜め上に伸びて角を形成してしていくのを感じます。
茶色とクリーム色の毛並みが全身を覆いつくすと、 つい先ほどまで人間の娘が居た同じ場所には、 一頭のジャージー牛が立つようになりました。
「ンモォオオオオ!」
牛に戻る時の感覚は、 人間の狭く小さな体に押し込められたものが一気に外に飛び出すような心地よい解放感があります。
「ンモウォ、 モウモウ」
「モォオオ、 モオ」
ホルスタイン牛は皆様よくご存じかと思います。白と黒の毛並みの愛らしい姿でよく知られ
一方で、 和牛交雑種というのは和牛と乳牛との混血の事で、 静香ちゃんはお母様がホルスタインだそうです。毛並みこそお父様から受け継いだ黒毛和牛種のようですがホルスタインの血を濃く受け継ぎ、 乳牛としても優秀な能力をお持ちです。
ちなみに
牛姿の静香ちゃんは
また裕子ちゃんの方は、 『ありふれた乳牛だよ』 なんてご本人はおっしゃいますが、 ちっともそんな事ありません! 整った毛並みは素晴らしく、 肌触りも最高です。お目の周りが黒く、 お顔の真ん中が白い配色も人間たちが可愛がっている 『パンダ』 という動物と同じなので可愛さは折り紙付きです。少し小ぶりですが、 横から少し曲がって上に伸びている角も裕子ちゃんの元気の良さとマッチしています。
一言でいうと、 お
ベロン……。
ペロッ……。
「モウッ! モウモウ!!」
お
このように牛らしく生きられるのも、 この学校に入ってからです。道を誤り人間として生きていた
そして明日から再び人間としての生活を強いられる
――――――
その日の夕方。帰宅した
「お嬢様、 本日は奥様がお戻りになられておられます。大広間までおいでくださいませ。」
この知らせは
我が家の家族構成は、 母と
お母様は数多くの牧場を経営し、 そこから得られるもので商売をしております。もちろんそれはあくまで表の顔。その実は、 そこで得た利益を使って同胞を保護する活動しておりますの。
これは神華高校のように人間に紛れてしまった者を探すのではなく普通の牛から覚醒するものを探す事を目的としております。
そのため、 お母様は仔牛の買い付けに日々奔走しておられます。しかし、 これはとても辛いお仕事です。
この屋敷で働く者は、 全てお母様によって救われた乳牛達です。慣れない人間の体と生活に、 不安な彼女たちをお母様は
仲間の為に身を粉にして働くお母様を
――――――
広間には、 多くの
そんな中にお母さまが両手で抱えるように大きな宝石箱のようなものを持って、 白いワンピース姿で現れました。
裸の女性達に囲まれながら、
「千尋さん、 急に呼び出してしまってごめんなさい。今日はあなたにどうしても伝えておかなくてはいけないありますの。だから、 こうして皆さんにも集まって貰いましたのよ。」
「それは良いのですが、 皆さまにもご関係が。」
「そうです。でも、 お話するよりもまずは……こちらを見てください。」
そういったお母様は、 箱を開けて
入っていたのは一対の大きな角と切られた髪の束。角の大きさや匂いからどうやら
「奥様……。申し訳ございません。」
なんとか搾りだすように発言したのは、 この家の執事長さんです。
「いいのです……。そのために
お母様も辛そうに頬をそめ、 息を荒くしながら会話をしております。
「……はい。それでは失礼いたします。……」
彼女はそのまま両手を床に突くとそのお姿をガンジー種の牝牛に変えました。それを合図に部屋中の女性たちは次々と
「千尋さん……。これは、 ……あなたのお父様です。」
「お父様……。」
動揺する
「あなたは、 お父様にとって初めての仔。彼女たちが産んだ仔供達の姉なのです。あなたにはこれから、
お母様を含め、 この場にいる皆さまは今だ現役の乳牛ばかりです。
しかし、 それと同時に兄弟姉妹がいないと思って育ってきた
「あなたに重圧を背負わせてしまっている事には申し訳なく感じます。でも、 お父様が遺した血を一頭でも多く次の世代に繋いでいきたい。それが妻である
「……お母様。」
擬態している時こそ人間に近い
「千尋さん……。お父様を預かってくださる?」
はいと両手で大事に抱えた
「ウモォ……ウモオオオオ……。」
お母様の悲しそうな鳴き声に呼応するように、 部屋中の牝牛たちが一斉に鳴きだします。
「「「モォオオオオオオオオ」」」
人間に変身する行為、 『人化』 の有無でもうひとつ異なるのは、 生きる長さです。人間と同じ寿命を持つお母様達と、 お父様との間には、 長い年月の差があります。それは、 お父様が
――――――
その夜、 自室に戻った
『モウ、 モウモウモウモウ』
切なげに声を上げ腰を下げる一頭の牝牛と彼女のお尻の前に立つお母様。
『ンモォオオオ』
前脚を振り上げて牝牛のお尻にお母様がのしかかります。すると先ほどまで切なげな声を上げていた彼女は。
『…………。』
静かに涎を垂らしながら恍惚な表情を浮かべぼっーと立ち尽くしています。これは牝牛の発情行動で、 人間だと 「自慰」 がそれに近い物でしょうか。発情した
広間中の牝牛達は入れ代わり立ち代わりにこの行為に及び、 お母様も乗ったり乗られたりして牝としての姿を晒しています。そうこれは言わば、 牝同士の熱い交尾なのです。
同じ一頭の
牝同士の濃厚な愛情表現が頭から離れず、
「……しずかちゃん。……ゆうこちゃん。」
そんな悶々とした思いを隠していたある日。
強く抱き合い口づけを交わして舌を絡める。時折、 口よりはみ出る舌から粘液が滴り落ち、 愛おしく互いの唾液を吸いあう姿。それが先程の牝牛たちの交尾と重なって
胸に手をやり乳首を指に添わせると、 興奮のせいか母乳がにじみ出て参りました。もう片方の手は、 お
昼間に毛づくろいしていただいた時に付いた、 お
お母様たちのような群れをお
――――――
それから数日が過ぎたある日。
委員会活動で遅くなった
幼馴染という時間の長さと同じホルスタインの血がお
今日はもう先に帰ったかもしれない。連絡を取ればすぐわかる事なのに、 それができないのは愛し合っているお
スンスン、 スンスン……。
匂いを頼りに
そういえば人間は探し物をする時、 目に頼りきりで鼻はほとんど使わないものというのを元人間だった裕子ちゃんから教った事を思い出します。生まれた時から牛だった
視覚と言う見かけだけで本質を
匂いに頼る探しものは時に視覚よりも早く、 そしてより正確に状況を教えてくれる場合があります。漂ってきた牝牛の甘い匂い。それは、
これは更衣室からでしょうか? 教室とは違って窓のないドアを前に、 目を閉じて視覚を閉ざし、 より集中して鼻を効かせる事で静香ちゃんと裕子ちゃんが部屋の中で
耳をすませば聞こえる水音と、 息遣い。人間は写真や映像などの視覚情報だけでも興奮できる淫乱な生き物だと聞きましたが、 やはり
「……静香ちゃん。……裕子ちゃん。」
目を閉じたまま胸とスカートに両手を伸ばしたその時、 ふいに思わぬ声が掛かります。
「ちーちゃん。呼んだぁ?」
「え?」
目を開けるとそこには
「す、 すみません。
とっさに謝る
「覗き見なんて良くないな、 千尋ちゃん。」
微笑みかける静香ちゃん。そして。
「悪い子は、 こうだ。……んっ」
「え、 あっ、 ンん。」
『覗きなんてしてません』 と言うよりも早く
しびれを切らせた静香ちゃんは 『開けて、 開けて』 というように、 舌で歯茎と前歯を舐め上げます。そのしぐさが愛おしく、
触れ合う舌の温かさと流れ込む甘ぁい唾液。静香ちゃんのだからこんなに甘いのでしょうか? それともこれも愛の味?
初めてのキスの味に酔いしれてながらも徐々に慣れ、 やっとの事で自分から静香ちゃんの舌へ絡み付けようとした矢先に、 すっとお顔が離されます。唇が離れ
「ああんっ、 もっとぉ」
と、 はしたない声を上げてしまいました。体まで離れると
「ああもう、 静香。ズルい! あたしも。ねっ。ちーちゃん。ぅんっ」
「ふぇ、 あむっ」
余韻に浸っていた
静香ちゃんだけでなく、 裕子ちゃんも
「ん。ちーちゃ……。あむっ」
「レロっ、 ゆーこちゃ……。んっ」
きっとこれが 『愛し合う』 という事なのでしょう。先程の静香ちゃんとのキスは、 どちらかと言えばされるがまま。静香ちゃんは
「むぅ、 裕子! さすがにもう長すぎだ。」
時間を忘れて、 静香ちゃんを
「先に名前を呼ばれた方からキスするという約束だったから、 あんまり長いと悪いと思って途中で我慢したのに……。」
あら、 そうだのですね。意識してませんでしたが、 静香ちゃんが先でしたわね。もちろんお
「それに千尋ちゃんも! 私の時はあれほど積極的ではなかったじゃないか。
まあ、 なんて可愛いらしい。ムクれてしまった静香ちゃんのお顔の愛らしさに、 つい……。
「あむんっ」
「ふぇ? んン!」
三度目のキスは自分から、 今度こそは
――――――
あの日、 覗き見てしまった
三頭とも同じ想いに身を焦がしていた事を考えるとそれだけで胸が熱くなり、 またどうしてもっと早く気が付かなかったのだろうという後悔はありますが、 それでも相思相愛になれた事は喜ばしい限りです。
こうして、 あれほど悩やんでいた事とは裏腹に、 あっさりと
これからの目標は、
それとも私の
とにかく、 お母様達のような素晴らしい群れになるよう、