ダークサイドFILE No.03

メイド興行

作者:DarkStar

犬はよく人に従順な生き物だといわれている。だが 犬からしてみれば 仕えるに値する者であるからこそ 服従するのだ。もし 彼らから主人として不適合と判断されたならば 貴方も 飼い犬に見捨てられるかもしれませんよ。

ご主人様 お茶が入りましたぁ 長い髪を揺らし笑顔で紅茶を勧める少女。

それを受け取る年若の青年。ん。くるしゅうない。くるしゅうない  なーんてね。あー。やっぱりお茶はメイドさんに入れて貰うに限るなぁ。あー俺って幸せもんだぁ

長い髪の少女は そんなぁご主人様たっら お上手なんですから~

昼の一時 メイドさんと お茶しながら  優雅に過ごす。こりゃあ 死んじまった爺さんに感謝しねぇとなぁ~

話は 一月ほど前まで さかのぼる。

富豪の老人が一代で築き挙げた莫大な財産を手にした青年。

数ヶ月前まで 大学も中退したまま 定職にも付かず 親のすねをかじって生活していた彼の生活は 一変した。

6畳1間のアパートから 祖父の建てた 豪邸へまた いきなり経営に口を出す事はできないが 時期社長としての居場所が与えられ ほとんど 遊んでいても勤まるような会社員としての生活。

そんな彼の前に スーツ姿の女性が現れ名刺を差し出す。

メイド興行

ええ そうです。我が社では メイドの育成から 派遣までを一手に引き受けるビジネスを展開しております

格差社会が一層進む世の中 また メイドさんブームと言うのを逆手にとって 育成から 派遣までを手がける企業が現れてもなんら不思議はない。

彼の祖父の家にも 使用人が幾人いたが 慕っていた主人をなくし 途方にくれていた所へ新たにやってきたのは 品性のかけらもない。現代風の若者。

それでも なくなった旦那様のお孫様だからと 我慢してきた彼らにも わがまま放題な青年の仕打ちに もはや 我慢の限界と言ったところ。

元々 引きこもりぎみで 会社出てきても 次期社長 の権力ですぐに家に帰るってしまう彼にとって 家が居付きにくい場所になったと言うのは とても難点だ。

そこへ うまいタイミングでやってきたあこがれのメイドさん達。

思い上がった彼は それまで けなげにも 尽くしてくれた使用人を全員解雇し

このメイド興行から派遣された。メイドさんとの生活を選んでしまった。

おかえりなさいませ ご主人様 声をそろえ まさにメイドさんという服を着込んだ女性達。そこへ 彼に交渉話を持ってきたスーツの女性が彼女達と同じ服を着てやってきた。

おかえりなさいませ 旦那様 わたくしは メイド長を勤めさせていただく 赤池 渚です

どうやら 彼女達のお目付け役として この家に派遣されてきたようだ。

この子達。左から 雪乃 来夢 祥子 です

紹介された 3 人は よろしくおねがいします。ご主人様 と声を揃えて笑顔で挨拶をした。

髪の長い 清楚な雪乃。元気印といった小麦色の肌の来夢。控えめで あまり表情を変えない祥子。そして 大人の魅力抜群の渚。

4 人のメイドを舐めるように見つめる青年。ふとあることを思い出したのか。あれ 雪乃ちゃん 白銀 雪乃でしょ。ほら 俺高校クラスが一緒だった。高禅寺 雄一だよ

ああ そういえば 申し訳ございません。わたくし 同級生の方を忘れてしまうなんて・・・・・・

彼女が忘れるのも 無理はない。有名なお嬢様で校内のアイドルだった雪乃としがない一男子生徒の雄一ならば 致しかたないだろう。

でも なんで雪乃ちゃんが メイドさんに・・・・・確か家 すげぇお金持ちでしょ

すると雪乃はうつむきながら 自分の身の上を語りだす。

高校を卒業後 両親の会社が倒産。そのため 借金まみれとなり 大学に行く金もなくなり中退し 働く事となったそうだ。

ごめん

いえ いいんです そのおかげでご主人様とも またご一緒できるんですもの 雪乃のやさしい笑みに癒される雄一。

美人のメイドさんに囲まれた。彼はますます会社には出社せず メイドさん達との生活にのめりこんでいった。

ガッシャン!!!!

申し訳ございません。ご主人様 またやっちゃいました とは 雪乃。これで一体 何枚目の皿だろうか。

ゴキン!!メキッ!!! わりぃご主人様 また壊しちまった と来夢。祖父の趣味の西洋甲冑がどうやったら それがこんなにひちゃげるんだろうか。

・・・・・・・・・・・・・・・ 祥子ちゃん なんか喋ってよ。・・・・・・ と雄一が言うと。ボソボソボソ・・・・・・ 聞こえないよ

どうやら ここには 問題児ばかりが派遣されたようだ。本来は 営業や交渉がメインの仕事であろう渚が フォローに走っているのも 納得できる。

もうしわけございません。旦那様

いえいえ もう慣れました

それから 一年ほどの幸せを彼は メイドさん達と共に満喫した。

ご主人様。お茶が入りました おっちょこちょいではあるが 肌が白く 清楚可憐でかわいい雪乃。

ご主人様 背中流してやるよ 口は悪いが 腕力と 運動神経は抜群そして 時折見せる女の子らしさがかわいい来夢。

ご主人様 これ 新商品 とってもおいしい 声は小さく 口数は少ないが 主人に一生懸命尽くす姿がかわいい祥子

ご主人様 お疲れになりませんか メイドとして 完璧な行動と大人の女性の魅力抜群の渚。

幸せな生活 だがそこへ突然やってきた不幸。

新たな祖父の遺言がみつかったのだ。それによると 祖父の財産はとある団体に全額寄付との事

また 祖父の会社も 仕事もしない上に もはや後継者でもなんでもなくなった雄一は やっかいばらいで解雇され。

無一文。

では 高円寺様 あなた様との契約期限は 過ぎましたため 私達はこれにて撤退いたします

メイド服は着ているが いつものやさしい口調ではなく 冷静な物言いの渚。

さようなら 雄一さん

まあ 頑張ってな

・・・・・じゃぁ・・・・・・ もはや ご主人様と呼んでくれないメイド達。

おい 待ってくれよ。雪乃。なあ 俺達 あんなに仲良かったじゃないか一緒に暮らそうぜ と雪乃にすがりよると

離してください。お金を頂けない以上。あなたとの契約はもう終了致しました

いつもは そう 昨日はでは明るい笑顔と声を与えてくれた雪乃が今は冷たい反応をするのみ。

なあ 来夢も

声を掛けられた来夢は 雄一に顔も向けずに いやだよ。ただ働きなんて 自業自得だろ せめて会社でまじめに仕事やってりゃ首にはならなかったかもしれないのに

祥子!!!! 祥子にも呼びかけると。

黒崎・・・・・・覚えてる? 相変わらず 小さな声の祥子。黒崎・・・・・そうか思い出した。この家の執事長だ 彼が必死に思い出すと。 黒崎祥子。お爺ちゃん・・・・・・・首になって泣いてた 貴方 絶対ゆるさない!! めったに表情を変えない。女の子が歯を剥き出して 怒りの表情をだしている。心なしか彼女の犬歯も尖っているように見えた。

それでは わたくし達は 帰りますので と雪乃が言うと。

それでも 雄一は 待ってくれ!!!頼む。頼むから。俺を一人にしないでくれ!!!!なあ 俺お前のご主人様だろ!!! そういって 雪乃の腕を離さない雄一。

貴方は もう わたくし達のご主人様なんかじゃありません!!!! と雪乃は言うと

雄一の腕がガブッ!!!!と言う鈍い音と共に激痛が走る。

痛てッ!!!!!!

雄一の腕を雪乃から手を離し 床に倒れこんでしまう。

女の子に噛まれたのに傷口から血がだらだらと流れ落ちていく。

雪乃の方を見ると

ぐるるるるるるるるる 口の周りを血に染め 歯を剥き出して威嚇している姿はまるで けだもののような声を出している。

ぐぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ がるるるるるるるるる

その声に驚き 周りを見ると。来夢と祥子も雄一を取り囲み。歯を剥き出して同じような うなり声を上げる。

なんだよお前達

すると 彼女達のスカートのしたから 雪乃は白の 来夢は黄金色の 祥子は黒の動物の毛が飛び出すと。スカートをめくり上げる。

スカートがめくれ 下着が見えているにも関わらず 3 人はうなり声を上げたまま 両手を前に着き よつんばいの格好になると

彼女達の頭から 三角の耳が飛び出し 腕や 足に獣の毛が覆う。

雪乃のかわいらしい。鼻先は 湿りけを帯びながら 黒くなると口元と共に前方へ突き出す。

元気印で意思の強そうな来夢の瞳が 獰猛な獣の目へ変わっていく。

小声しか話さなかった祥子の小さな口はおおきく耳の方まで裂けていく。

ワン ワン!!!!

アオウン アオウン!!

ワオン ワオン!!!!

3 人のメイドがそれぞれ 金色 黒色の犬に変わると。うなり声を上げながら 雄一に近寄ってくる。

だめよ。3 人とも 戻って戻りなさい!!! と犬にかわってしまった彼女達に呼びかける。

腰を抜かして立ち上がれず 抑える腕からはまだ血が流れ落ちている雄一は ただ ガクガクと震えるばかりだ。

助けて 渚さん この 化け物から とにかく助けてくれよ

彼は さっきのまま おびえてさえいれば まだ 幸せだったかもしれない。絶望の中でも 少なくとも 生きては行けたのだから

化け物? この仔達が? こんなにかわいいこの仔達が 化け物ですって!!!人間ごときが 思い上がんないでよ!!!! 雄一の言葉に 渚は 怒りの眼差しを向け。

え!! と雄一が声を上げていると。渚の手の平にブヨブヨとしたものが覆いそれが 肉球に変わると 細く 美しい指先からは 鋭い爪が生え 獣の前肢へと変わっていく 渚は 爪先立ちになり そのまま 四肢を地面に付く 血のように真っ赤な耳と尻尾が飛び出し。体中の骨格が音を立てて変化していく。すると前の 3 匹よりも一回り大きい 赤毛の犬が 雄一に牙を向いて立っていた。

ガルルルルルルルル!!!!! グゥゥゥオンゥゥグゥゥゥオン!!! グルルルルルルルルル!!!! アォオオオオオオオオオオンン!!!!

うわああああああああ

4頭の犬に囲まれた。雄一の悲鳴が屋敷中に響き そして静かになった。

とあるビルの最上階。表札には メイド興行 の文字。

その一室で 薄暗い部屋でいかにも高級そうな椅子に座り。女の子を侍らせる一人の男。

ご主人様 雪乃 こわかったぁ。あんな男に腕掴まれて もう本当に

ご主人様ッ 雪乃は キャンキャン鳴いてただけだったけど 止めはちゃんと あたしがさしたんだぜ!!!!

おじいちゃん 取れた

そうか それは よかったなぁ 祥子 と祥子の頭をなでる男。祥子も気持ちよさそうに 目を瞑る。

しょ 祥子ちゃんズルい。ご主人様 雪乃も なでなでしてください!!!

そうだよ。祥子だけじゃなくて あたしも撫でてよ

三人とも 男をよってたかって取り合っている。

それはそうと ちゃんと後片付けはしてきたんだろうな

それは もう大丈夫だって!!!ばっちりここに とお腹を軽く叩く 来夢。

残さず ・・・・食べた 自己主張はしっかりの祥子 また 頭をなでてほしいようだ。

いい物食べていたわりには 筋張ってて おいしくありませんでしたわ と不満げな雪乃に。

でも 骨は丈夫そうだったから おやつに何本か 持ってかえってきました とは びっしりとスーツ姿の渚だ。

まあ ならいいんだがな

と男は言って 椅子から立ち上がろうとすると。

なあなあ ご主人様!!!フリスビーやろうぜ!!! ご主人様に投げてもらいたいんだ と来夢が男を引き止める。すると

お生憎様ですが ご主人様は 雪乃とおさんぽ行くんです。!!!!あ~ぁ ご主人様とおさんぽなんて ひさしぶり~。それに 来夢さんは ご主人様が恋しくて フリスビー噛み壊しちゃったのに。どうやって やるんです と雪乃が来夢に食って掛かる。

なんだと!!!ゆっ雪乃だって さびしくて リードぶちやぶっちまったの。あたしだって知ってんだぞ!!!

それは !!! と2人が言い争っていると。

・・・・・・ご主人様 ・・・・・疲れた。・・・・・・・一緒に・・・・・・・お昼寝・・・・・・・

そうだな 俺も仕事詰めで疲れたし

と祥子がまた 漁夫の利を掻っ攫う。

じゃ じゃあ 雪乃も ご主人様と添い寝します

あたしも なあ いいだろ!!ご主人様!!!!

そこへ 駄目です。あなた達 報告書は書いたの?それにここでは 社長 と呼びなさい!!! と少し怒っているのか渚が声を出し 男をにらみつける。

そうだな。まだ 働いている社員もいるんだ。まず やる事をやってから 休みにしなさい

はーい と男の言う事は素直な3人。

終わったら 3 人に新しい首輪と リードで散歩しよう。それが終わったら フリスビーで遊ぼう

わたくしに 新しい首輪を!!!

フリスビー!!!!!

・・・・・頑張る・・・・・ と言うと 3 人は 急いで 部屋から出て行くと自分の仕事に向かっていった。

まったく 社長の言う事は聞くんだから と先ほどから ご機嫌斜めの渚。

2 人の時は 雅也だ

もう いいじゃない!!!別に と渚が言うと子供のようにじっと渚を見る男。その姿に負けたのか 溜息を一つ。わかったわよ。雅也。所で 今回の仕事全部貴方の仕業ね

よくわかったな。渚。さすがは 俺のパートナー

全く いきなり あんなのを富豪にしたかと思ったら また貧乏に逆戻り 何がしたかったの

いやあ 貧乏人に金やったら 変わるかなと思ったんだけど。人間なんて やっぱり本質はそう変わらんな。実はな 死んだ爺さん。俺達の協力者だったんだ

そうなの

俺達みたいな獣を人間とわけへだてなく 接してくれた

ああ 祥子のおじい様も雇ったのも?

っていうか あの屋敷には 爺さんが死んだ時には 人間なんて人っ子一人いなかったのさ。あんないい爺さんの孫が あんなんだったのか 許せなくて

なるほど でも お灸をすえるにしても 今回はやりすぎなんじゃない

知るか 駄目な遺伝子は淘汰された方がいいんだ。俺達獣の中じゃ常識だぜ

まあ そうだけど

それにしても 今回は ずいぶん派手にやったみたいだな。お前がいたのに

ゆるせなかったのよ。あんなにかわいい かわいいあの仔達を あの男ったら 化け物なんていったのよ

興奮し 犬歯が尖っている渚。

そいつは 生きてる価値ねえな

と男は 頭部を完全な狼の姿に変えうなる。ヒトにはわからぬその声で 渚に語りかける。

俺のかわいい仔供を化け物扱いかよ。くだらねえ 人間より ずっと輝いているあの仔らを

全くそうね

さあて 渚。爺さんの金も 入ったし 本格的にビジネスに乗り出すか

ああ とりあえず 犬の獣人を集めて 従順な メイドさんを育てて 稼ぐぞ!!!

従順て ご主人様じゃなくて 貴方にでしょ

いいじゃねえか別に

あたしとしては 貴方の周りにこれ以上メスが増えると困るから。なんとかしてほしいんだけど

まあ いいじゃねえか きっとあいつらも 自分の本当のご主人様を 自分で見つける。お前みたいにな

本と こんな時だけ うまいんだから。じゃあ パパ 娘達のしつけ 頼んだわよ

ちょ ちょっと待て それはお前の

私だって疲れたの。報告書は全部まとめたし 今日のノルマは達成したから 帰るわよ

わかった

これから 元気 100 倍の 3 人娘を相手にする事を考え もう既に疲れる雅也だった。