ダークサイドFILE No.04

狩る者、狩られる者

作者:DarkStar

ある所 闇があり ある所 正義あり 使い古された言い回しかもしれないが この世の中には 悪いものがいれば 必ず それに罰する者たちがいるのだ。

今日はそんな者たちの話。

へっ なんだ。女かよ。脅かしやがって 夜も更け 人気のない静かな公園で いかにも チンピラという感じの男が目前の女性に下品な笑いを浮かべる。

女だったら 悪いのかよ

Tシャツの上にジージャンを着て 腿のところが破れたショートパンツをはいている女性。

背丈こそ は普通だが 出る所は出ている気の強そうな彼女は 男をにらみ付ける。

やぁぁあ お前みてえな 若いメスなら 言うことねえよ。食っちまう前に やっちまうのもいいかもなぁ

へええ やれるもんならやってみな  男の言葉にも女性は動じずに言い返す。

んだとぉぉ このうさ公が 調子こいてんっじゃねーぞ!!!手前なんざ 俺の敵じゃねえよ!!! と男が言うと そのまま天を向き

ウオオオオオオオン!!!!!! と遠吠えすると 服が破れ 上半身の筋肉が発達していく。男の顔には 剛毛が生え 爪はするどくなり 口には 牙が 腰からは尻尾を生やした狼男に変わった。

ふーん 野生とちがって ウサギでも狼勝てる事を教えてやるよ

ガゥウウウウ!!!! 男が力任せに爪を振るうが女性は まるで木の葉が手をすり抜けていくかのようにひらりと かわす。

グウウウウウ!!!! 今度は 牙を剥き出して襲ってくるが 女性は その場で3メートル程 ジャンプして 男の後ろに着地すると そのまま 強烈な回し蹴りを男の後頭部に叩き込む。

吹っ飛ばされた男が立ち上がろうと 身を起こすと いつの間にか目の前に来ていた女が そのまま腹に一撃を食らわす。

キャ キャイイイン!!! 弱弱しい声を上げると 男の体は小さくなると 犬と変わらない大きさになると そのまま四つん這いで逃げ出した。

逃げられると思うなよ と女が体に力をこめると

綺麗な瞳がルビーのように輝き 耳介が長く伸びながら 頭頂部に移動する。

全身をやわらかな純白の毛で覆われ ショートパンツから 丸い尻尾が生えてくる。

前歯がするどく 顔の前に出てくると 女性は 人の姿を残した ウサギに変わっていた。

ウサギ獣人が 鼻をひくひくさせ 耳を立てていると こっちか ハハッ 相当あせっているみたいだな。足音が一定じゃなくて おどおどしてる。この方向だと あっちから 回りこんだほうがいいか

余り知られていないことだが ウサギの嗅覚は動物の中でも 非常に高く 犬と同等の機能を持っているといわれている。それに加えて 高い聴覚。彼女は 先回りして狼を追い詰めるつもりだ。

ハッ ハッ ハッ 息を荒く 下を出して 走る狼。

なんだ クソ あのアマ なんで俺の行き先がわかるんだ それになんで 疲れてねえんだ

ウサギの高い索敵能力を知らない狼は 徐々に追い詰められていく。

あいつ そうとう疲れているみたいだな かなり息が乱れて 心拍数も上がってきてる 軽快にピョンピョン 跳ねながら走る姿はかわいらしく スキップでもしているかのようにも見えるが そのスピードは 狼に今にも追いつきそうだ。

ウサギは 獲物にされやすいため 逃げ延びるための様々な身体的特徴を有する動物だ。長い耳が風に当たる事で 血管を直接冷やし 体温を維持して 疲れにくくする事。また 後ろ足でジャンプしながら 走ることも 上り坂に強いというだけでなく 障害物をよけるのに 最小の距離で曲がれるようにする工夫の一つでもあるとも言われている。

獣人同士の戦いは如何に自分の特徴を知り それを生かして戦うのかに掛かっている。そもそも 集団で狩りをする狼が たった一人で 彼女に立ち向かってきたその時点で彼の負けは 確定していたのだ。

(あいつ もう限界だろうな。これで 決める。)

ウサギ獣人は 地面を強く蹴りジャンプすると 全体重を左足に乗せ 狼の頭に向かって落ちていく

アアオオオオオオオオオオオンン!!!!

何が起きたのか理解する前に 狼は頭部をすさまじい痛みに襲われ 舌を出して その場に倒れこむ。少し 痙攣したかと思うとそのまま動かなくなった。

フー 終わった 白い毛に覆われたウサギの前肢から 指が伸びてくると それは人の手に変わり ジージャンのポケットをまさぐる。胸のポケットから携帯電話が出てきた頃には その場に 白い毛の獣人の姿はなくなり 人間の女性の姿に変わっていた。

ああ あたしです。ダークサイド 一匹始末しました。場所は ええ おねがいします 彼女は 依頼主に電話をかけ。

さあ 仕事終わり かーえろ

たっだいま!!  さっきの女性が元気に自分の事務所に帰ってくると

ああ おつかれ。お茶煎れてあげるわね  とスーツ姿の女性が出迎る。

うーんそうだね。お願い  ソファーに 女が座ろうとくると回ると

ねえあんた そのかっこうで帰ってきたの?  先ほどのスーツの女性がお茶を持ったまま 大声を上げる。

そのかっこうって  と肘や袖 腰まわりをみるも 別に変わったところはない。

あんたズボン!!!お尻 丸見えだよ スーツの女がまた大声をだすと といわれた女性が自分の手で 後ろをさわると直に触れる肌の感触。

さっきウサギに戻った時 破った奴だ 気が付いて 顔を真っ赤にするも。

そういえば さっき街中通ってきた時 やけにみんなの視線が痛いなと思ってたんだけど

スタイルのいい年頃の女性が お尻 丸出しで歩いていたら 男でなくても 目が言ってしまう。

どど どうしよう

もう遅いわよ。たく もっと自覚しなさいよ。それになんで 下穿いてないのよ

だってえ 尻尾出る時 食い込んで痛いんだもん。ふえええん どうしよう。もう外歩けないよ~

先ほどダークサイドを倒した時の凛々しさはかけらもなく ソファーのクッションに頭をうずめながら 相変わらず お尻まるだしままの格好で 落ち込む彼女にスーツの女性は

はーーあ 頭隠して まだお尻かくれてないわよ と呆れたようにタメ息をつく。