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リクエスト 作品 No.04

受け継がれる竜の印

作者 DarkStar




この作品は、サカキ さんのリクエストを元に
DarkStarが、作成した作品です。


「ここが最後の部屋か?・・・・・」

全身に青い鎧を身にまとい、長剣を構えた男がそういうと

「ええ、おそらく・・・・・。」

男ほど重装備ではないが赤い鎧に細身の剣を備えた女性そう答えた。

長い長い洞窟の奥底、さまざまな罠やモンスター、迷路を抜け、
やっとここまでたどり着いた。

この先に、彼らの目的・・・・竜がいる。

幼い頃、二人の住む街を壊滅させ、
家族を奪った憎き仇がこの奥に・・・・。

しかし、二人の体はもはや満身創痍だ、
鎧には細かい傷が目立つだけでなく、装甲に守られていない所は、
切り傷やすり傷によって、服を血に染めている。

二人の剣もいつ折れてしまうかわからない。

いや、そもそも強靭な皮膚をもつ竜にこんなボロボロの剣が通じるのか、
不安に足が進む。

それでも二人には立ち止まることは許されない。

家族の仇のため、そしてここまで苦労を共にしてきたパートナーのためにも、

「リアナ・・・いくぞ」

意を決して前に進む男戦士の言葉に、

「わかったわ。ラスティ。」

女戦士も後に続いた。


部屋は、非常に大きな空間となっていた。

これまで通ってきた通路や部屋は、竜程の大きなを持つ者にとっては、
たんなる通用門に過ぎないのだろう。

竜の生活スペースであろう事がうかがい知れる。

王城の大広間いや、それよりも大きいかもしれない。
壁面に設置されたかがり火に照らされ・・・・・

石を敷き詰めた床の上に赤い絨毯のラインが一直線に伸びている

その末端にそびえる巨体

鰐のようなゴツゴツした金色の鱗が全身を覆い、
口は、猛禽類に似た形状をしていながらも、
開いた口からは、鋭い牙が幾重も並んでいる。
巨大な腕と足には、鋭い爪がひかり、
頭にはヤギよりも立派な角が2対生えている。

『汝らか・・・・・わが住処を荒らすものは・・・・。』

低く、こもったような声が、広い部屋の中にこだまする。

「りゅ、竜がしゃべった。」

ラスティが驚き、後退りする。

『言葉を操るが汝らヒトのみと考えるは、愚かしいことよ。』

少々古臭い感じの口調だが、それでも、竜は人の言葉で答えた。

『我は争いを好まぬ、
  汝らがこのまま、立ち去るというならば、その命まで取ろうとは思わぬ。』

重々しく、ゆっくりと二人を窘めるような口調を取りながらも、
有無を言わさぬ、威圧感で二人を圧倒する竜。


しかし二人とて苦労してここまで来たのだなにもしないまま帰れるはずがない。

10年間憎み続けた存在が今、目の前にいる事に二人の気持ちは高揚し、
ラスティは、怒りと、興奮に満ちた声をあげた。

「ふざけるな!!。
 いや、・・・・・・先に答えろ、10年前リンガルの街を襲ったのは、お前か」

彼の怒りの声に反して、
冷静な竜は一呼吸置いてから

『さあ、人の街の名は覚えて居らぬが、
 確かその頃・・・・この国の街を一つ・・・・・滅ぼした。』

「その時、私達の家族は・・・・あなたに殺された。」

今度はリアナが声を上げる。

その声に竜はやっと合点がいったようにうなづくと・・・・。

『そうか、あの時の・・・・・されどあれは、
 汝らの王が、我との契約を破り、
 我を討伐せんと兵を送ったため、我は、その報復として戦ったまで・・・・・・・・
 非はもとより、汝らが王にあるのではないか?』

「?・・・・なにを言っているんだ。」

竜はしばらく考えてから、
二人が知らないであろう真実を語りだす。

『もう、300年ほど前の話だ。わが住処の麓に人間が住み着き、
 自らの国と称して居座った。それはよい、獣の世界でも、
 縄張りというものがあるからな、少々強引ではあったが認めてやることにした。
  だが、きやつらは、あろうことか、我の巣を自らのものとせんと
  襲いかかってきた。』

「嘘よ、この国の歴史では、竜は金品を奪い人々を苦しめて
 来たと伝え聞いているわ」

今度はリアナが声を上げて竜に反論する。

その声に竜は目を丸くした後で

『そうか・・・汝らにはそう伝わっておるのか・・・・・・。
 竜である我が、金など集めてどうしようというのだ?』

呆れたように溜息をついて竜は話を続ける。

『我と人の軍との勝負は歴然、空を駆ける我に、地べたを這いまわる人が
 勝ち目などあるものか、我は王城へ攻め込み、当時の王と不可侵の契約を行った。』

『それからというもの・・・・。
 人は我との契約を守り続け、我らはともに干渉することはなかった。だが・・・・・。』

『10年程前だ、当代の王に代わってからというもの。王は、我との契約をたびたび破り、
  巣に兵を送るようになってきた。
 事もあろうか、兵引かせるよう呼び掛けた我が使い魔を殺して寄こした。
 もはや、ゆるすことなどできはしなんだ。』

竜は、感慨深そうに両目を閉じて、
すこし考えるように昔を懐かしむかのように一息切ってから再び口を開いた。

『とはいえ・・・・あの戦いは、我もいささか知を欠き、
 暴れ過ぎたゆえ、よく覚えて居らぬ・・・・・。
 されど、我も木の股よりいでし者にあらず、汝らが家族を思う気持ちもわかる。』

『汝らの気が済むと言うのであれば、この首くれてやっても惜しくはないが・・・・。』

そううなずこうとして、竜は首を左右に振った。

『だが我には、どうしてもこの地を離れるわけにはいかぬ。
 我を討つというのであれば、汝らを屠らねばならん。
 今一度言おう。立ち去れ、ならば命だけは助けてやろう。』


「断る。俺達は家族の仇討ちのためにここまで来たんだ。」

剣を構えたラスティとリアナ。

『そうか・・・・・ならば・・すまぬとだけ言わせてもらおうか・・・・』

そう言って竜は二人に向って、凄まじい咆哮をあげた。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「つ・・・・、つよい」

今までともに闘ってきた剣がついに折れてしまい、地面に屈してしまった
ラスティからそんな言葉が出てくる。

そう、もともと無謀だったのだ。

竜にとっては狭い洞窟の中であるため、
その圧倒的な攻撃力は行使できない物の・・・。

二人は竜の体にしがみつき、振り下ろされる腕をかいくぐりながら、
鱗の合間を攻撃していたが、
小山ほどもある巨体を誇る竜にとって人間の一撃など蚊に刺されたようなもの。

まったく効果があるようにも思えなかった。

「くそ・・・・・。」

こぶしを作り、地面を殴ったラスティの耳に

「きゃあああああああ」

絹を引き裂くようなリアナの悲鳴。
さっきまで腕にしがみついて攻撃していたリアナが
手を滑らせて、ラスティの方へ飛ばされていくる。


このまま、地面にたたきつけられたら彼女の運命はきまってしまう。

(間に合うか・・・・・。)

前のめりに立ちながら、背中に走る痛みに顔をゆがめるラスティ。

しかし、なんとか力を振り絞って両手を前に出し、

「リアナーーーーーー。」

掛け出したラスティは、間一髪リアナを抱きかかえるが、

彼女の受けた衝撃を体全体で受け止め、その勢いで

後ろ向きに倒れ込んだ。

「いつつ・・・・・・・。」

「大丈夫!!ラスティ!!」

ラスティの腕から下りたリアナがラスティに詰め寄る

「だ、大丈夫だ」

彼女の前なので強気に言うが、さっきのでどうやら
すべての力を使い果たしてしまったようだ。
手や足に一切力が入らない。

動けないラスティに付き添うリアナ


その二人にとどめとばかりに竜は息を吸い込み

開いた口から火の玉が見える・・・・・。

こんなところで負けたくない!!!

そう思いながらも、二人はお互いをかばうように身構える

その時、二人から光が・・・・・・・。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
それは、二人が竜の巣である洞窟に入る前の事だった。

「ええ!?、竜退治ですと!!!」

名もない道具屋の店主は、二人の話に仰天しているようだ。

「やっぱりそんなに、ビックリすることですか・・・・」

ラスティがそういいながら、自分たちの生い立ち

そして、竜への仇討ちの旅であることを店主に告げる。

「そうですか・・・ご家族の・・・・」
気の毒そうに言った店主、最初こそは二人を思い留めさせようと
していたが、話せば、話すほど二人の意志の強さに説得が無駄であると悟ったようだ。

「ええ・・・・。」
顔を伏せ気味に話す、リアナ。

「ならば、お二人にどうか、お守りといってはなんですが、
 これなんかいかがでしょうか?」

「え?サービスしてくれるんですか?」

そういったラスティに

「はは、商売人をからかっちゃいけませんよ・・・・。」

無論、只なはずはなかった
しかし高い値段でもなく、お金にわずかながら余裕があった二人は、
そのアイテムを買うことにした。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

竜の放った火球は、光にかき消されてしまう。

『な・・・・、なんだこの光は・・・・・・』

その光度ましていく、光のまぶしさに、竜は顔を背ける。

「これって・・・・・。」

『これは、竜の爪とキバで作った、アクセサリーです。
 これを持つ者は、竜の神の加護を得ることができ
 竜の力を手に入れられるとも言われております。』

道具屋の店主の言葉を思い出す二人。

リアナが買ったのは、竜のキバで作ったイヤリング
ラスティのは、竜の爪で作ったペンダントだった。

「いったいなんだこれ・・・・・、あれ、おい!!!
 足が足が動くぞ!!!!。」

そういって立ち上がるラスティ。

「すごい、体の奥底から、力がわいてくるみたい。」

「でも、いくら、傷が治っても武器がなくちゃ・・・・。」

光の視力を奪われた竜が、手当たり次第に手を足を尻尾を振り回し、

「うわ、あぶね」

よける二人、竜も必死に二人を捕らえようするが

いかんせん目隠しされた状態ではなかなかあたらない。

「くっそーーーーいいかげんしろ!!!!」

よけるのに疲れたラスティが、竜の腕に殴りかかる。

ひ弱な人間の一撃など、竜の強靭な鱗にはとどがないはずだが・・・・・・。

「グアアアアアアア!!!!!」

悲鳴を上げたのは、巨大生物のほうだった。

見ると、金色の鱗はひしゃげ、血が流れ出している。

「やああああ!!!!!」

裂帛の声を上げて、切っ先の折れた細身の剣で切りかかったリアナ

普通ではありえないほど、高くジャンプし、

竜の巨大な翼を・・・斬り落としてしまった。

「すごい、これなら・・・・・・ラスティ・・・・」

「あああ、これなら竜の奴も・・・・・・・・。」

こうして二人の反撃が始まった。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

アイテムによって、パワーアップした二人に、竜も応戦したが、

ついにその命運も・・・・・・・・・・

『ば・・・ばかな・・・・よもや・・・・我が・・・・負けるとは・・・・・。』

急激に強くなった二人に驚いた竜は二人を改めて見つめなおす。
光り輝くアイテムが目に入った彼は

『そうか・・・そうだったのか・・・・・・・
 だが・・・・・これでやっと「おれ」もやっと楽になれる・・・・。』

そう言い残して、竜は倒れ込んだ。
赤いじゅうたんには、竜の血で一層赤々と染まっていく。

「やったぁ、倒したぞ、竜を・・・・。」

「夢じゃ・・・・・ないのね・・・・。」

「ああ、夢じゃない!!!敵をとったんだ。」

二人は、抱き合って歓声を上げる。

二人を覆っていた光は消えていることに気がつき、

「いやあ、あの道具屋のおかげだったな」

「ええ、そうね、この・・・・・。」

そう言おうとしたリアナは、自分の耳を触る。
固い感触。まるで竜のキバがくっついてしまったかのようだ。

「ラスティ・・・・そういえばネックレスは?」

「え・・・・、あれ、どっか落としちまったかな・・・・。」

そういって頭を掻いたラスティの手を見たリアナは悲鳴を上げる。

「ラスティ、その手・・・・・」

ラスティの手や腕には、青い鱗がびっしりと生え、指の先には、さっきまで
つけていたネックレスと同じような爪が生えそろっていた。

「え・・・・・なんだこりゃあああ」

驚いたラスティ・・・しかし、体が変化したのは、彼だけではなかった。

「どおして、ラスティ・・・ぐぅあああ」

リアナ口には鋭く長い牙が生え、彼女が会話するのを妨げていた。

「グゥ、らすグゥウウウウ・・・・・。」

徐々にヒトの言葉を話せなくなっていくリアナ

「リアナ!!!!」

体中をきしませるような音、そして彼女のズボンを破って、
鮮やかな赤い鱗に覆われた尻尾が生えてきた。

「りあ・・・・グゥウウウウ!!!!」

こめかみを押さえるようにひざを突いたラスティの頭から、
1対の角が生える。

「グゥウウウ!!!!!」

「ガアアアア!!!」

二人の変化は、まだつづく、

ブレストアーマーと、服を引きさいてリアナの背中から大きな翼が、
あらわになった胸も、すでに鱗に覆われた人間の女性の持つべき

やわらかな肉体はすでに失われていた。

ラスティの顔が前に突き出し、鋭い牙が並ぶ竜の口へ代わると

二人の体が次第にが大きくなっていく。

服を布切れに、鎧を鉄くずに変えながら、

リアナは、ルビーのように真っ赤な、
ラスティは、サファイアのような青色をした竜へと姿を変えていた。

(ラスティ・・・・・・)

(リアナ・・・・・・・)

二頭の竜はお互いを見つめあい、抱き合うように体をすり合わせると・・・・・。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

それから、しばらくして・・・・・。

「なんとか、うまくいったようですね。」

洞窟の高台から、二頭の竜の様子を見ていたのは、

なんと道具屋の店主だった。

「まさか、あのお二人が『彼』に勝つとは・・・いやはやおみごとです。」

「マスター!!!!、引越しの準備完了しました。」

そういって後ろからかけてきたのは、年若の少年。
背中には、大きなリュックサックを背負っている。

「小竜太。よくやってくれました。
 さあ、この『世界』は、もうだいじょうぶでしょう。
 次の世界に参りましょう・・・。」

「マスター、『ドラゴンオーブ』はそのままにしてしまっていいんですか?
 『陛下』にオーブを見守るようにおおせつかっているのに・・・・。」

竜の間のさらに奥にある部屋、そこで輝く真紅の宝石。

「『陛下』より言われている事は、あくまで『オーブの守護者を見守れ』との事。
 『彼』代わってに次は彼らが・・・・
 いいえ、彼ら一族が、守ってくれるでしょう・・・。」

かつての竜討伐の英雄、『彼』が千年にも渡って守り続けたオーブは、
二頭の新しい竜、ラスティとリアナ。
そして、リアナのおなかの中で育まれる新しい命によって護り継がれていくだろう。

「でも、人間の王様が、オーブを手に入れようとしているんですよね。
  ・・・それは・・・・」

「ああ、そのことですが・・・・
 この国の王は近いうちにその命が尽きてしまうことでしょう。実に悲しいことですが・・・。」

わずかながらに笑みをこぼす店主。

「まったく、『陛下』のご勅命とはいえ。なんとも、ヒト使いの荒いことですね。」

思わず愚痴をこぼした店主に、小竜太がクスクスと笑っている。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

次の朝、王国には激震が走った。
王が突然の病でこの世をさったのだった。

そればかりか、王が執着していた竜に関する資料の一切が
失われ、またその関係者たちも原因不明の病に倒れてしまうという
不可解な事件が起こった。

気味悪がった王族、そして次の王となるべき王子は直ちに

竜討伐を禁止するお触れを出し、以後数百年間それがやぶれられる事はなくなった。

青く高い空に、鮮やかな竜の夫婦・・・・いや親子が翔けていく。
幸せそうにしていく竜たちに人々は恐れながらも親しみを持ち。

それから末永く竜と人とが争うことはなかった。

	
おわり
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