星獣殿 NOVELページ >その他の獣化作品 > 獣化作品 No.03

獣化作品 No.03

白猫とまたたび

作者 DarkStar

大きな屋敷に入ってくる
一人の青年。

「和真様、お帰りなさいませ。」

「お坊ちゃま、お帰りなさいませ。」

多くの使用人たちが、青年に声を掛ける。

「じい。坊ちゃまはもう止めてくれよ。」
と白髪の目立つの男に声を掛ける。

「しかし、じいにとっては、坊ちゃまはおいくつに
なられても、坊ちゃまですから。」

「全く、しょうがないな。」
という和真の前に
一人のメイドがおずおずと和真の前に出てくると
黙ってお辞儀をする。

「あ、唯。た、ただいま。」
というとすぐさま、メイドの横を通り過ぎていく和真。

「あッ。」
メイドが和真に手を伸ばそうするも
そのまま下におろしてしまう。

「和真さま・・・・・」

メイドが誰にも聞こえないように小さな声でつぶやく。



半年ぶり戻った自室で和真は、
大きな溜息を一つ吐き、
「唯・・・・・・」
さっきのメイドの名前をつぶやく。

「いつから、こんなになっちゃったんだろ。俺達」


------------------------

雨の中、小さなダンボールに
一匹の仔猫が捨てられている。

「ニャー、ニャーニャー」

「ん。ああ、しろねこさんだぁ。」
 黄色い傘をもった、
 幼稚園生くらいの男の子が仔猫を見つける。

「ミー、ミー、ミー」

「しろねこさん、寒いの?、そだ僕のおうちに行こ」
 男の子は、仔猫を抱きかかえると
 水溜りをジャブジャブ走って、家に帰る。

大きな屋敷にたどり着き、
男の子が、門の前までたどり着くと
初老の男が慌てて少年の前に走ってくる。

「坊ちゃま、余りに遅いのでじいは心配しましたぞ、
 ん。どうなされました、その猫は。」

初老の男が少年に聞くと

「雨の中に一人で鳴いてたんだ。
 寒くてかわいそうだからつれてきたの。」

「さようでございますか。
 ならば、早く乾かして差し上げなくては・・・」

おおきなバスタオルを持ってきた
男の子が仔猫に声を掛ける。
「ほら、しろねこさん。タオルだよ。
 ふきふきしないとかぜひいちゃうよ。」

 男の子が拭こうとするが、
 捨てられた恐怖心からか仔猫はいやがるばかりだ。

「うーん。そうだ。」
 男の子が床に手を着くと、
 ズボンから、黒い毛が伸び
 頭からは、黒い三角のものが生えてくる。

「にゃあああああああ」
 男の子が猫の声が出すと、体がどんどん小さくなり、
 白猫と同じ大きさになる。

「ニャー、ニャー」
(これなら、怖くないでしょ。)

「ミー、ミー?」
(どうして、にんげんじゃないの?)

「ニー。ニーーーー。ニー?」
(ちがうよ。僕、人間の姿になれる猫なんだ。
 君はなんていう名前なの?)

「ミー、ミー、ミー、ミー」
(よくわからない。にんげんは、
 私の事「唯(ゆい)」って言ってた。)


「ニャーニャー」
(そうか、僕はかずまって言うんだ。)

「ミー?」
(かずま?)

「ニャ、ニャア、ミャア、ミャア」
(そうだよ。君は今日から、ここに住むんだよ。
 唯ちゃん。)

「ミー、ミー、ミー」
(え、でも、私・・・)

「ニャア、ナー、ナー、ナー、ナー、ナー、ナー、ニャー」
(この屋敷に居る人たちは、
 父さまも、母さまも、兄さまも、じいやも、
 めいどのおねえちゃんたちも
 みんな猫だから、心配しないいんだよ。)


----------------------

「和真様、お食事の準備ができました。」
 夕暮れ時となり、先ほどのメイドが
 和真を呼びに部屋の前まで訪れる。

「わかったよ。唯、すぐに行くから。」
返事をした和真が部屋の外に出ると
すでにメイドの姿はなかった。

「・・・・・・」
いいしれぬ寂しさを感じた和真は
黙って、食堂へ歩いていく。

----------------------
部屋の扉を開けた和真少年

「かずまーーーーーー」
という声と共に
見知らぬ女の子が素っ裸で走ってきた。

「え、ええ!!!!」
突然の事にわけもわからない和真が
固まっていると。

「かずまぁ」
といって女の子は和真に抱きつく

その時、和真の鼻孔に良く見知った者の
匂いが入ってくる。

「この匂い、唯?、唯なのか」

「うん。そうだよ。かずま」

「すごいよ。唯。
 人間に変身出来るようになったんだ。」

「でもね。かずま、猫に戻れないの」

「大丈夫だよ。唯ならすぐに慣れるから。」

「うん頑張るね。」

---------------------

和真が食卓につくと
じいやが申し訳なさそうに
声を掛けてきた。
「坊ちゃま、今日は、だんな様も、奥様も、
 集会に出ておられて、お帰りになりません。」

「まあ、この時期だから。しょうがないよな
 で、にいさんは?」

「はあ、慎太郎様は、ただ今お仕事の関係で
 海外です。お戻りは、・・・正月ごろかと思われます。」

「ふーん、兄さんも相変わらず、忙しいんだな。」

「でも、舞さんも、ついていってるんだろ、
 あの2人、そろそろ、結婚しないのかな?」

「そうですな。じいも、いつお声が掛かるかと
 思っておるのですが、慎太郎様は今、お仕事の方が
 楽しいとかで、ご結婚の事はお考えでないそうです。」

「まあでも、もう結婚してるのも、同然だもんね。
 兄さん的には。」

「ですが男は、所帯をもって初めて一人前とも申しますから・・・。」

「とかなんとかいって、じいやは、兄さん達の
 子供が見たいだけだろ?」

「はは、坊ちゃま、それだけが、じいの
 老後の楽しみでございますゆえ。
 どうですか?、坊ちゃまも、ご結婚は?」

「俺に?、俺まだ学生だよ。
 まあ、すきな子はいるけど、
 でも俺、その子に嫌われてるみたいだから・・・・・」

---------------------

「和真、見て見て、これ。メイドさん」
メイドの格好をした唯が、
和真の前でひらりと回り
その姿を見せる。

「よく似合ってるね唯。でも、どうしたの?」

「今日から、私、ここの使用人として働く事にしたの
 だから、和真様 よろしくお願いします。」

にっこりと笑顔の唯。

その声に

「あ、あああ。そ、そうなんだ。」
となま返事の和真。

(唯には、和真って呼んでほしいんだけどなぁ・・・・)
とは思ったが、自分のために
一生懸命仕事をしようと思っている唯を前にして、
和真はついにそれを言う事ができなかった。

---------------------

ひさびさの長い休み。
とはいえ。
なんとなく、どこかにいって遊ぶ気になれなかった
和真が、だらりと過ごしていると

携帯が鳴り出す。

「ん、メール、虎太郎(こたろう)か?、ふーん、
 飲んでるから来いって、相変わらず
 急な奴だな。」

虎太郎とは、和真の2つ下のいとこだ。
小さい時から、よくくっついて来たので
一緒に遊んだが、和真が遠くの大学に
通うようになってから、
余り会わなくなった。

どうせやる事もないし、
ひさびさに、いとこに会うのも
悪くないので、和真は外に出た。

---------------------

「和真様、どうされました。
 あの、私に何か、不備でもあったのでしょうか?」

心配そうに唯が和真に声を掛ける。

だが、当の和真はしらんぷり。

(わかってる、唯に悪い事なんかない。
 悪いのは、素直になれない俺だ。)

「和真様・・・・」
何にいらだっているのか検討の
つかない唯は、ただただ、立ち尽くすばかり。

唯は、メイドとして働くようになってから
無意識に、和真と距離を置くようになっていた。
しかし、それは、あくまで使用人と
主人との自然な距離だった。

大好きな唯に、距離を置かれた和真は、ふて腐れ、
事もあろうか、唯自身に当たるようになっていた。

気が付かないうち、和真のそれは
エスカレートし、ついには、
唯との距離を自分から広げる結果となってしまった。

彼が、わざわざ遠くの大学を選んだもの、
近くにいると唯を傷つけてしまうのではないかという
思いもあったからだ。

----------------------

呼び出された和真が、
店にやってくると
奥の個室に案内された。

「あれ、澪(みお)も来てたんだ。」

澪とは、唯の妹で虎太郎の家に住んでる猫娘だ。
別々のところに捨てられていた
2匹の姉妹が、近しい家同士に拾われる。
運命とは、えてしてそんなものなのだろう。

「おお、かじゅまぁ、来ててわるいかーーー!!!」

と、ろれつの回らない澪が元気に応える。

「ああ、もうできあがってるんだね。」

飲むといっても、
彼女が飲んでいるのは、またたびジュース
ただ、猫の獣人はこれでも、十分酔っ払えるので、
わざわざ酒を飲む必要もないし、
酒よりこっちの方がいい気分になれるのだ。

無論人間の法律には、このような事は書いてないので
未成年の飲酒にはならない。
あ、でも、この状態で車を運転するのは、
獣人の監査機関に怒られるのでその辺は要注意だ。

「和兄、さっさと飲めよ。」
呼び出した虎太郎も既に出来上がっている。
こうなったら、自分も酔って仲間になってしまうのが一番の手だ。
「へいへい。」
店員さんに和真も、またたびジュースを頼む

すると、

「かーーーじゅまああ。」
と和真の後ろから手を回してくる。
よく聞いたことのある声。

振り向いたそこには、
白い猫耳と、尻尾を生やした唯がいた。

この店は、獣人が経営しているため、
この姿で個室の外にさえでなければ、特に問題はない。
だが、こんなに気持ちよさそうな、
唯をみるのは、和真も久しぶりだった。

「かーじゅま、どうしたの?」
ほほをすりよせ、和真に寄りかかる唯。

「唯、相当酔ってるな。」

「よってらーいもん。へーきらもん。」
酔っ払いは、決して自分が酔っていると認めない。
またたびで酔ってもそれは一緒のようだ。

「むふぅ、かじゅまあああ。」
しらふの時は、決してしない唯の頬ずりに
和真は感動しながらも
「ゆ、唯、今日は一体、どうしたんだよ。」

「だって、かじゅま。
 最近ぜーんぜん構ってくんらいんらもん。」
と尻尾をブンブン振りながら言う

「いや、別にそういうわけじゃ。」

「なんだぁ、和兄、唯姉さん。怒らせてんのか?」
と言う酔っ払い雄猫と

「そーら、そーら、あたしのおねえちゃんいじめんな!!!」
と酔っ払い雌猫。

今は、2人ともお揃いの虎縞の耳と尻尾を振って
なんともいい気分のようだ。

「まったく、酔っ払いども、ほら唯もしっかりしろ。」

人の気いや、猫の気も知らないで
と思う和真が唯を抱き寄せると

「やー、かじゅま、かまって、かまってよぉ」
さっきの顔から一転、泣きそうな顔になる唯

「唯・・・・・」
どうしたらいいのか、わからないでいる和真に

「かじゅま、唯の事嫌い?」
上目づかいの唯が和真をじっと見つめる。

「そんなわけないだろ。」
じっと見つめられた目を逸らし、
和真が答える。

「じゃあ、唯の事、お嫁さんにしてくれる?」

これは、昔、お互いがまだ仔猫だった時分
喧嘩した時のお決まりの会話だった。
唯にこういわれた和真の答えはいつも決まって・・・・・

「大人になっても、
 唯が僕の事好きでいてくれたらいいよ。」
幼い時の言葉をそのまま唯に告げる和真。

「・・・・う・・うん・・・・」

と言いながら、唯は重たそうな眉を閉じる。
和真に預けた唯の体が軽くなってきたと思うと
唯の頬から、白いひげと、白い毛が生えてくる。
鼻の下に割れ目ができ、
口元も前に突き出してくると
猫の顔へと変わっていく。
和真が握っていた
唯の掌がブヨブヨしてくると、
それは、肉球に変わり、猫の前肢に変わる。
数秒後には、メイド服に埋もれた
白猫が和真のひざの上で寝ていた。

「唯も寝ちゃったし、俺帰るぞ。」
と和真が振り向いた時には、

自分達の服を布団に、
グースカ寝ている、虎猫が2匹。

「げ、まじかよ・・・・・・」

「あのすいません。お客様・・・・・・」
と個室に入ってくる店員。
「ああ、すいません、こいつらはこのまま寝かしといて下さい。」
と虎猫達を指差し、和真が言うと。

「いえ、そちらは構いませんが。・・・・」
と伝票ひらひらさせる店員。

飲み屋の鉄則、しらふの宿命
『金は酔ってない奴から取れ。』

しかたなく、金を払い、
腹いせに、自分の頼んだ
またたびジュースを一気飲みして、

和真は帰宅の途に付いた。

疲れたのと一気飲みした事で
一気に酔いが回った和真は、
そのままのかっこうで、唯を抱いたまま
寝てしまった。

次の日。

「おはようございます。和真様。」
と言う声が聞こえた気がした。

そして、和真のほほをぬらす。暖かい物。
目を開けた和真の目に飛び込んできたのは、
自分の顔を舐める全裸の猫娘だった。

尻尾と耳を立て、
ヒゲをピンと伸ばし、牙が覗く口から、
ざらざらの舌を和真の頬に滑らす。

「ゆ、ゆい。」
和真が声を絞り出すと。

「ニャー、ニャーー」
(おはよう、かずま)
目を細めてにっこり笑う唯。
うれしさの余り、和真は両手で抱きしめる。

唯の頭から背中の毛をなでながら、和真は、
「唯、ごめん今まで構ってあげなくて。」

そう言いながら、和真の手を黒い毛が覆い、
黒い耳が生えてくると、
黒猫の獣人が、白猫の獣人に体を
すりよせる。

お互いに言葉は交わさず、
ただただ、身を寄せ合う2匹・・・・・


数日後

大学から、下宿先のアパートに帰ってきた和真の
足元にすりよってくる白猫。

「唯、ただいま。」
と白猫を抱き上げると

「ミャー。ミャーオオ!!」
(お帰り。和真)
と唯も応え、顔を擦り寄る。

そんな唯とのひと時に幸せをかんじながら、
玄関にある小包に目がいく。和真

「宅急便?、誰からだろ・・・・・、へ、じいや?」
唯を肩に乗せたまま、
和真が包みを開けると、
出てくる出てくる、結婚式場のパンフレット。

「じいやめ、俺達の方に狙いをつけてきたか・・・・」
 すると、和真の顔を舐める唯

「な、なんだよ唯」
 びっくりした和真を尻目に肩から降りた唯は、
 散らかったパンフレットに一目散に走っていくと
 その一冊を前肢で指差す。
 そこには、綺麗なウェディングドレスをきた
 花嫁が写っていた。

「あのー、唯ちゃんは、それが着たいんですか?」

「ミャーーー!!!」

「わかったよ。唯のお願いは聞いてあげるから、
 頼むから、俺が卒業するまで待ってよ。・・・ね。」

	
おわり
Page TOP