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獣化学園シリーズ No.11

弓道部

作者 DarkStar

シーンと静まり返る弓道場

そこには、弓のしなる音と、
矢が的に当たる以外の音がない空間。

ここは、白十字女学院 弓道部。

道場の梁に掲げられた大きな額には『心・技・体』の文字。

的に向かって一列に並ぶ胴着姿の生徒達。


弦から離れた矢が、スーー!!っと風をきって飛び、
的に向かってダン!!っとにぶい音を響かせる中・・・・

一人だけ、コツンッという甲高い音を響かせながら、
的を外し、壁に当たてている。

「む・・・・・・・・・」

いくらやっても的に当たらず、いらいらしてくる弓道部員。

そんな彼女の後ろに立つ先輩部員。

「比奈、少し休みなさい。 乱れた心では、いつまで立っても的には当たらないわ。」

「は・・・・はい・・・。わかりました。部長・・・・。」

その後、何度か、比奈の射的が続けられたが、結局的には当たらない。
比奈が弓道を始めて、半年。今日ほど的が小さいと感じた日はなかった。

そして・・・・。

『皆さん、下校の時刻となりました。 片づけを行い。下校の準備をしてください。』

本日の部活動終了時刻を告げる生徒会のアナウンス。

「はい、みんな片付け入ってー。 それから、・・・・比奈・・・アナタはちょっと後で残りなさい」

「おつかれさまでした~。」
「おつかれさま~。」

片づけが終わり皆、寮に向かっていく。

「比奈・・・・・どうしたの・・・・最近調子悪いみたいだけど」

夜用のライトに照らされた弓道場で部長と二人きりになる。

「はい・・・・・・」

「やっぱり、新人戦の事なのね。」

夏の大会が終わり、3年生は、引退
その後、2年生の新しい部長、新たなメンバーで秋の大会に望む。

部長自身、選手として大会に出るのは、
初めてではないが、部長として大会に臨むのは始めてだ

一部員の時とは、違い、どうしても部全体の事にも
気を配らなくてはならない。

個人競技とはいえ、精神状態がモロに結果に影響を受ける
弓道にとって、一年生の中でも、有力選手である
彼女が調子を落としているとなると、他の選手の精神面でも、影響がでかねない。

「でも、どうしても、大会の事が頭から離れなくて・・・・・。」

「初めての大会で緊張する気持ちはわかるわ。私もそうだったから・・・・。」

「え、部長もなんですか・・・・。」

「ええ、そうよ。その時、前の部長に呼び出されて、
 今の貴女みたいに励ましてもらったんだから・・・・・・。」

という言葉は、比奈にとって意外だった。

彼女の大会での姿は、悠々としていて、
波紋一つ立っていない水面のごとく静かで清らかな雰囲気をかもし出していた。

「で、でも・・・・・とておもそんな風には、
 あたし、部長みたいにうまく自分をコントロールできません。」

「しょうがないなぁ。・・・・じゃあ、私が先輩から貰ったのと同じお守りをあげるわ。」

「え!?」

そういうと、部長が足袋を脱いだかと思うと、
袴の帯を緩め、胴着を肌蹴させ、白いサラシに巻かれた胸元を比奈に見せた。

「ぶ、部長・・・いったい、なんなんですか。」

半脱ぎ状態の部長よりも、見ているだけの比奈の方が顔を真っ赤にしている。

「なによ。胴着脱いだだけじゃない。女同士でなに恥ずかしがってるの?」

そういいながら、サラシの端を緩める。
窮屈に閉じ込められたそれは、
白い布から開放され、飛び出す。

日々の練習で日の光に晒された腕や顔、首筋は、
健康的に日焼けした肌だが、
胴着に包まれ、その下にさらにサラシで守られた二つの膨らみ。
その肌は透けるように白く、その皮膚の下を流れる血管の色で
仄かなピンク色になっている。

日々鍛えられた強靭な胸襟によって、
支えられたそれらは、大きいながらも、重力に逆らって綺麗に上を向いている。

大和撫子を思わせる部長の絹のように滑らからな黒髪と対照的な
色合いの美しさ。
まさに静と動を併せ持った抜群のスタイルに思わず見とれてしまう比奈。

そんな様子に部長は、クスリと笑みを浮かべつつ、
さらけ出した胸を隠すわけでもなく、
逆に両腕を真っ直ぐ伸ばしたまま左右に大きく開く。

細く繊細な指の股が硬く閉じられると
一本、一本確認できた指は手のひらにぴったりくっ付き、
やがてその両腕は、一対の骨の上に筋肉を覆っただけの
物体へと姿を変えた。

部長の日焼けした腕よりも、さらに茶色い繊維が、
変形した腕や脇の下生えてくる。

根元がしろく、先に行くほど濃い茶色の羽が腕を多い尽くすと
それらは、一つの翼となり、部長が肩を揺らすと、
大きな風を比奈の方へ向かって吹き付けさせた。

起こされた風が心地よく、比奈の前髪と袴をやさしく揺らす。

袴から、出ている部長の足は、鋭い爪を伸ばしながら、
黄色く変色していくと、鱗に覆われたような鍵爪へと変わるのがわかった。

足の変化に合わせて、腰の後ろ当たりが膨らんいき、
袴がずれおちると、まだ白い肌をかろうじて残したお尻の付け根には、
羽でできた尻尾が生え
腰周りが人のそれから、鳥類のそれに変化していく。

頭を覆う髪も、羽毛に置き換わり、
やさしい瞳が、鋭い目に変わる。

化粧もしていない自然なピンク色の唇は、
硬い黄色の嘴に変わりながら、鼻を飲み込み
目じりの手前で止まった。

「クワワワワワワワ!!!!」

部長が変化した一羽の鷹が、大きな翼を羽ばたきながら
甲高い声で一声鳴いた。

(部長・・・・・とっても綺麗です・・・・・)
思わず、そう思った比奈の
前に立った鷹は、片方の翼を広げ、
自分の脇に顔を寄せると、

嘴で起用に自分の羽を一枚むしりとると、
比奈に向かって差し出した。

そのまま、比奈が受け取ると、
部長は鳥の姿のまま。
『この羽をお守りに持っていなさい。きっと貴女の味方になってくれるわ。』

「あ、ありがとうございます。部長。あ、あたし、きっとコレ大事にします!!!」

比奈は感激し頭を何度も下げた。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

新人戦終了。
名門、白十字女学院は、例年通りの好成績で
その幕を閉じた。

無論、比奈も上位入賞を果たし、
次の大会へ歩を進める快挙を成し遂げた。

「あの~、部長・・・・」

と恥ずかしそうに手をモジモジさせながら、
1年生の一人が部長に立っている。

「な、なに・・・・・どうしたの?」

「あの・・・・・あたしにも、部長の羽・・・下さい!!」

「え?」
そう、部長が驚いていると・・・・

「比奈から聞きました。 部長の羽を貰ってお守りにしたから、入賞できたって!!。
 あたし贅沢言いません。一枚だけでいいです。下さい。」

一枚とれば十分じゃない。
などと突っ込もうすると・・・・。

その話を聴いたほかの部員達が、

「部長、比奈ばっかりずるい、あたしにも・・・・。」

「あたしにも下さい。!!!」

「えええ!!!」

さすがの部長とて、羽の一枚や、二枚ならよいが、
こんなにたくさんの部員達によってたかられて
羽をむしられては堪ったものではない。

「ちょ、ちょっと待って、待ってよ。みんな。」

「いいじゃないですか、部長、減るもんじゃなし。」

「減るわよ。あたしの羽。飛べなくなったらどうすんのよ!!!。」
と部長は、逃げ出す。

「あああ、逃げた!!追いかけろ!!・・・・・。」

追いかけっこは、屋外に及び、

全速で走っている部長の足は、長距離の練習をしている
陸上部員達をごぼう抜きにした。

「めずらしいな。・・・・貴子があんなに必死に走っているなんて・・・・・」

同じクラスの陸上部部員がそういうと

「なんか、・・・・あの子、追いかけられてない?、
 アレ、そういえば、去年もこんな事なかったっけ?」

練習中の陸上部員が思わず、
話し込んでしまうほど、
すさまじい勢いで陸上部の横を走り抜けていく弓道部員

「し、しつこい・・・・・」
と、弓道部部長、平野貴子は、胴着が破れるのも帰りみず、腕を翼に変え
空に向かって飛び立つ。

その後を追う、部員達も次々に鳥の姿に変わり、
そらに向かって飛んでいく。

「クワワワワア!!!」
(もうみんな勘弁してぇ・・・・。)

「「「クワァァァッァ!!!」」」」
(部長!!、観念してください!!)

追いかける鳥たちがいっせいに鳴く。

そういえば、去年の今頃、大会の後、
それまでやさしくしてくれた前の部長が一切、口を聞いてくれないことがあった。

しばらくして、
『わたしが大人げなかったわ。ごめんなさい。』
と謝ってくれたが、結局理由は教えてくれなかった。

まさか・・・・・このことだったのかと、貴子が思ったときには、・・・・・

もう後ろまで、後輩達が迫っている。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・
弓道場に遅れて現れた顧問の教師。

「あれ、今日は、休みじゃ・・・・・」
と思っていると、弓道場の空を飛ぶ大量の鳥の群れ・・・・。

「は、は~ん。また伝統のアレか・・・・・・」

去年も、その前も、いやOGである彼女が
部長だった時も、同じような事が・・・・・

彼女がそう思っていると
道場に息を切らしながら、比奈が入ってくる。

「はあ、はあ、すみません。遅くなり・・・・・あれ?先生・・・お一人ですか?」

「おまえこそ、どうしたんだ鷲崎。」

「あの・・・・クラス委員の仕事で遅くなっちゃって・・・あの~・・・みんなは・・・・」

・・・・その様子、これも例年通り・・・・
まさか今年もなどと思いながら、教師は、生徒に

「鷲崎・・・・お前、平野から、羽とか貰ってないか?」
と聞いてみる。

「え、先生どうしてそれを・・・・・・ああ、あれ、何でみんな鳥になってるの?」
予想通りの応えに教師は笑いを必死に堪えている。

空を覆い尽くす勢いで激しく跳びまわる鳥達の姿が、
比奈の目に飛び込んでくる。

その光景を彼女が不思議そうに見ていると。

「ああ、練習の一環として、みんなで鬼ごっこしてるんだよ。鬼は、平野な・・・・・」

といいながら、どんな練習だよと自分に突っ込みを入れ、
笑顔で引きつった顔の教師が言うと。

「えええ、そうなんですか・・・・じゃああたしも・・・・」

胴着を脱ぎ捨てた比奈の体を羽が覆い、
喉元や頭には、白い羽毛。
それとは対照的に、手羽先となった腕や
新たに生えた羽根尾には、茶色の羽が覆う。

鋭く変わった嘴を大きく開き

「クウウウウウウウウウウ」
と鳴いた比奈は、鷲に変化し、
鍵爪に変わった足で床を蹴って空に舞い、
『鬼ごっこ』に加わっていく。

羽を貰った女の子が、次の部長となり、
部員の一人に、羽を渡したことで、
羽の争奪戦が勃発。

しかし、当の羽を貰った子は、なぜかその事を知らされず、次の部長へ。

これは、毎年繰返えされてきた弓道部の伝統行事。

「ふふ、この伝統はまだまだ続くみたいね・・・・
 でも、すごいなあ、なかなかこんな偶然は続かないと思うけど・・・・」

などといいながら、その偶然が必然になる要素の一端を担っている
教師は、まるで他人事のように鳥の追いかけっこを眺めていた。

・・・・・・・・・・・・・・・
数日後

「あ、あの・・・・・・部長・・・・・・」

比奈の呼びかけを、ことごとく無視するように比奈の前を行く貴子。
結局、何人かに捕まって、羽を力いっぱいむしりとられた彼女。

弓を引くたびに脇や、腕が痛む。

「どうしたんだろう部長、あたし、気に触る事したかな。」

そんな、比奈の呟きを知ってかしらずか・・・。

(いたた、もっとみんな手加減して抜いてほしかったなぁ・・・・痛。
 くう、この痛み絶対誰かに思い知らせてやるんだから・・・・・。)

痛みを堪えながら、練習を続ける部長。

そんな姿を遠くから見守る一人の生徒。

(貴子・・・・ごめんなさい・・・・・
 やっぱりこの伝統は・・・・今年も続いていくのね・・・・)

去年の部長は、自分と同じ思いをさせている
貴子に申し訳なさを感じながら・・・・・心のどこかで、去年の復讐ができた事を
ちょっとだけ喜んだ。

・・・・・・・人の強い意志は、
偶然を引き寄せ、必然に変える
歴代部長の強い思いが
来年もまた、必然の結果を呼ぶことになるだろう。

	
おわり
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