星獣殿 NOVELページ >獣化学園シリーズ > 獣化学園シリーズ No.12

獣化学園シリーズ No.12

剣道部

作者 DarkStar

少女達の素足が、板張りの床を力強く踏み込み
竹刀が力打ち鳴らされ、乾いた音を響かせる。

顔を強固な面で覆い、全身を防具完全武装された
その姿は、女性の魅力という点においては、
いささか、その効力を発揮する事はない。

だだし、彼等を除いては・・・・。

「なに、今回の大会は、男女同じ会場だと!!!」
と叫ぶのは、黒十字学院 剣道部部長。

「どうも今年は、会場の都合でそう事見たいっすよ。
 主将。どうしますか?
 無様な姿を晒す前に、棄権しといた方がいいっすかね。」

と軽い口調の彼の言葉は、どこか軽い。

「ばかな、名門のうちが、目の前の敵に背を向けられるか。」

と先ほどの彼、副主将とは打って変って、
コテコテの硬派な様相を見せているのは、
この部の主将。

「いいか、お前たち、あの練習のつらさを思い出せ!!
 あれに比べれば、この程度の逆境なんて事はない。
 気合入れていけ!!!」

と部員達に激を飛ばす。主将だが・・・・・。

(逆境というほどの事かねぇ。)
と熱血している部員達を一人冷ややかな視線で見守る副部長。

(本当にこいつ等だいじょうぶかぁ)

男子校である黒十字学院にとって、例え武道着姿の
女子でも、平常心をかき乱されるのか、
いや、彼等には、もっと

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「やー!!、めーーーん!!!」

女子の甲高い声が聴こえる。
隣でやっているのは、女子の部。
彼等の『同族』白十字女学院の試合だった。

黒十字学院剣道部、団体戦。
ここまで、危なげなく勝って来た部員達。
しかし、ここへ来てなぜかみなそわそわしているように見える。

「先鋒・・・・前へ・・・・・・」
主審の指示で、前に進み出る。相手校の選手。

だが、黒十字学院の先鋒は前に進み出ない。

「黒十字 先鋒どうした。前へ!!」

「だ、だめです。しゅ、主将。うぉう、うおおお。」

とその場を後にして、立ち上がり、敵に背を向けて、
走っていってしまう。

「おい。こら、まて、またんかああ。」
という主将に対して、

「ああ、主審さん。腹が痛いそうなので・・・・先鋒棄権します。」

と冷静に審判に事情を報告するのは副部長。

「なに、・・・・体調管理はしっかり頼むよ。
 では、黒十字 先鋒棄権により、●▲高校の勝利。」


「次鋒・・・・前へ・・・・・」

続いて、次鋒戦はなんとか勝利を上げるもの
中堅は、途中で試合を放棄してしまう。

強豪で知られた黒十字学院が、
弱小の剣道部に明らかに苦戦している様子に

周囲からは、驚きの声が上がっている。

「次、副将戦・・・・・・・・・。」

「じゃあ、俺が行きますか・・・・。」
と面を付ける副主将。

(全く純情だね。ここの連中は
寧ろこういう状況でかっこいい所を見せるのが真の男だよ。)

爪先立ちのまま座り込み
竹刀の切っ先同士が合わされる。

「はじめ!!!」

その声と共に蹲踞(そんきょ)の姿勢が解かれ、
試合が始まる。

「おい、あんた等、今日は、調子悪いみたいだな。
 今日はうちのいただきだな・・・・。」

試合中に話しかけてくるとは、
全く、弱いやつほどよく吼える。

「おい、試合中に喋ると噛むぞ。」

相手に聴こえるくらいに小さな声で言い・・・

「何いい」
と相手と反応する頃には・・・・。

「メーン!!!」という鋭い声と共に、相手の面に走る鋭い痛み。

相手が打たれた事を認識した時には、
審判たちは、白旗を揚げ、黒十字学院の一本を高らかに宣言した。

一礼をした後。

(ふん、小物が調子に乗るんじゃねえよ。)

と心の中だけに止めておく。
剣道は、礼に始まり、礼に終わる

それは、礼を欠いた相手に対してでも、
忘れてはならない。

強豪の貫禄を見せた副主将の試合に
観客達は、歓声を上げる。

(さあ、うちのボスは大丈夫・・・・・)
と視線を戻した先は、

竹刀が打ち合われ、床を力強く踏みこむ音によって
周囲の者には聞こえないが、

彼の耳には、肩を上下に激しく動かし、
はっきり、『ハッ、ハッ、ハッ、ハッ』
と言う荒い息遣いが聴こえてくる。

(こりゃあ、今回はあきらめた方がいいかな・・・・。)

「大将戦・・・・・双方・・・前へ!!」

そして、ついに大将戦が、

「ハッハゥハッハッ!!!」
息を荒く、気合の声よりは、興奮したような声。

(なんだこいつどっかわるいのか?)
と対戦者が思うのも無理はない。

なにせ、試合開始間もない相手が、
既に満身創痍のように息を切らせているのだから。

『『『ウオオオオン、ウオオオオン!!!』』』
打ち鳴らされる竹刀の音に負けないような
犬の遠吠えが道場に響いてくる聴こえてくる。

「うるさいなぁ、どこの犬だ。」
などという声

顔を伏せた副主将は、
(すんません。うちの馬鹿犬どもです。)
と目を逸らすのだった。


そんな中試合は開始された。

一進一退の攻防ではなく、
試合自体は、黒十字が一方的に攻めているしかし、

「うおおおお、うおおおおん。」
その口から出てくる言葉は、しまりのない声と共に

竹刀が振られ胴を打ち据えられる相手。

しかし、剣道は、相手の体の部位を竹刀で
叩けばよいという競技ではない。

一本と認められる有効打突の条件の中には、
『充実した気勢』という物がある

ようは、気合の入っていない様子は、
有効打突にふさわしいとはいえない。

そのため、なさけない犬の鳴き声を上げる主将の打突は、
なんど相手を叩きつけても、一本にはならなかった。

さすがに力いっぱい殴られてふらふらになっている対戦者。

だが、それでも主将の一撃は一本にならない。

そんな時。隣では。

『勝者、白十字女学院。』

という声と共に上がる歓声。

そして、白十時の主将が、面を外し、頭に手ぬぐいを取った途端。

窓から吹き込んでくる強い風。

その風を受けた黒十字主将は、

「ウオオオオオン、ウオオオオン!!!」
竹刀を放り出して、両手を床に着くと。

面の隙間から、白い鋭く尖った歯が見え、
その先には、黒い物が見える。

剥き出しの足には、黒い毛がうっすらと生え、
爪が鋭く変化している。

「ウオ・・・・ウオオオオン!!!」
と叫ぶ異様な光景に固まる周囲

そんななか一人動いた
「このアホ!!!!!!」

と後ろから竹刀で、主将を思いっきりどつく副主将。

「キャイン!!」
という声と共に倒れこむ主将。

「●▲校の皆さん、すみません。大将戦。うち棄権させてもらいます。
 こんな試合になりまして、ホントすみません。」

深々と頭を下げた副主将は、
倒れたもとい、自分が倒した主将を担ぎ上げ、

外に向かってつれていく。
その時、彼の袴から、
黒い毛ダマリのようなものが見えたとか見えなかったとか。

会場近くの林の中、

4匹の犬、いや、
全体的にシャープさを備えたそれらは、狼だ。

それらを前にして怒りをあらわにする副主将。

「なんだお前等、なさけねーぞ!!そろいもそれって。」

「「「アオオオオン」」」

と鳴いているのは、どうやら
部員たち。

「おい、オメエもしっかりしろ」

主将が姿を変えたオオカミに向かって凄む。

「アオオオオ!!オン、オン!!」
(そうは行っても、白十字の『桜子』さんの匂いだぞ、
 いくら俺だって、あの匂いに理性は抑えられん。)

その言葉に、

「キャイイイイン!!!」
狼の頭をグーで殴る副主将。

動物愛護団体がみたら飛んできそうな勢いだが、
彼からすれば、雄狼同士の喧嘩だ。

「俺の雌の匂いで興奮すんな。テメェぶっ殺すぞ。」

普段の軽い口調はなんのその。
彼が本気で怒っている本当の原因はどうやら、
その一点だけのようだ。

自分の女の事となると普段クールな彼も
ついつい熱くなってしまう。

そういう感情は、人も、獣も変わらないようだ。

彼の怒りは収まらない彼の説教は、大会が終わるころまで続けられた。



獣である彼等にとって、匂いは、視覚以上に
遥かに多くの情報を与える。

その人の感情や体調、その他もろもろ、
あらゆる情報が入ってくる。

従って、彼等にとって、防具に染みたメスの匂いは、
彼女らの全裸の姿よりも、刺激の強いものだ。

だか、それは、オスだけに限った事ではない。

試合後、学院内の道場に戻って来た。
女子剣道部。

「黒十字の人達かわいそうだったねぇ。」

「でもさあ、今日は、やばかったよね。」

「うん。風向きこっち来てたら、あたしたちもやばかったよね。」

防具に染み付いた自分達の汗の匂い。
そして、昼間なるべく嗅がないようにしてきた
オスの匂いを思い出した彼女達は・・・・・・・。

「「「アオオオオオオオオン」」」

という叫びと共に体を変化させていく。

若くすべすべの肌を、硬い獣毛が覆っていく。
頭やお尻から、同じ毛の耳と尻尾が生え、

鼻が湿ってくると形を変えながら、前へ突き出し、マズルになる。

板張りの床に着いた素足と手のひらの裏に
プニプ二の肉球が生え、硬い爪が、床に傷をつける。

尻尾を振りたて、人の姿の時には、隠れていた肛門から、
フェロモンを出しながら、

女子剣道部員が変化した狼たちは、じゃれあう。

『ああ、先輩の防具、くさい、くっさぁああああい。
  でもとってもいいにおいですー。』

『あら、沙里奈ちゃんのだって鼻が曲がるくらい臭いわ。
  お尻の穴の肛門線と同じくらい臭いわぁ』

『やああん、先輩そんなこといわないでくださ~い。
 先輩のだって、同じくらい、くさいですよぉ・・・・・』

自分達の防具や胴着の匂いを嗅ぎながら、
興奮するメス狼たち。

匂いに興奮したメス狼たちは、
夜が明ける頃まで、道場で吼え続けていた。

	
おわり
Page TOP