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獣化学園シリーズ No.14

乗馬部 その2『しごき』と『いじめ』

作者 DarkStar

新しい生活、寮に入った不安はあるけれど、
中学からの友人と一緒の部屋ならと安心していた少女。

「千早・・・・・学校行こう・・・・あれ?」

朝、そのルームメイトに声を掛けるも姿がみえない。
(あの子、そういえば、乗馬部に入ったとか言ってたっけ・・・・。)

そういえば、朝練習で早く出かけるとも言っていた事を思い出す。

どちらかと言えば控えめで、
中学でも文化系の部活動に所属していた彼女。

バリバリの体育会系で、
中学時代は陸上部に所属していた自分とは違う感じだ。

その彼女が積極的に部活動に参加する姿、
なによりも、自分よりも彼女の方が先に部活動を決めた事が
宇麻子には意外だった。

そのことは、前日までさかのぼる・・・・

陸上部に入ろうと、陸上部の部室に行ったところ・・・・。

「上里さん・・・。貴女・・・・中学では、短距離だったの?」
と陸上部の先輩に言われた。

「はい。あたし、長距離走るよりも、そっちの方が好きで・・・・・。」

「そうなんだ・・・・・でも、あなたなら『種族的』に長距離が向いているじゃない?」

「え、どういうことですか?」
向いていないと言うならわかるが、
『種族的』とはどういう意味か、また同意を求めるようにする聞き方もよくわからない。
なによりも、走っている姿も見ていないのに向いているか
どうかなどわかるのだろうかと所に

思わず、宇麻子は聞き返した。

「どういうって・・・・」
そういった陸上部の先輩は、宇麻子の肩に顔を寄せる。
わずかに先輩の息が掛かったかと思うと。

と、急に飛びのくように顔を離し。

「あ、・・・・・ご、ごめんなさい。
 な・・・・なんでも、ないわ。なんでも・・・・はははは
  もし、長距離が嫌なら、・・・乗馬部とかどう?
  貴女には、向いていると思うけど・・・・」

驚き慌てる先輩の言葉、

「え・・・・またなんでですか・・・。」
陸上部の話から、突然出てきたほかの部活動。

「ま、まあ、いいから・・・あ、あたしの勘よ。ね、ためしに行ってみたら・・・・。」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

昨日のことを思い出し、
「なんか、あたし、あの先輩に嫌われちゃったのかな・・・・・。
でも変なの・・・・他の部活を紹介するなんて・・・・。」

不思議に思って、鞄から一枚のチラシを取り出す。

『乗馬部』とかわいらしい文字で書かれ、
部室の場所がわかりやすく書いてある。

「そういえば、なんであたし、乗馬部のチラシなんて貰ったんだろう?」

今まで全く興味のなかった部活動
とこれのチラシを貰った
『新入生歓迎会』の時の事を思い起こした・・・・・

その日行われた歓迎会は、彼女のイメージ物と違う事に、
戸惑ったのをよく覚えている。

このような行事でよく見られる、先輩達が自分部に
引っ張るようにして、新入生を片っ端から連れて行くような事は一切なく。

みな、特定の生徒に特定の部が勧誘を行っているような状態で、
先輩達の方も、自分の勧誘する生徒がわかるのか、
手分けをして生徒達を熱心に説得していた。

各言う宇麻子と、千早も先輩に付きまとわれ、
それが乗馬部と陸上部だった。

逆に他の部からは一切、誘いがなく、
文化系の部が、「もしよかったらでいいの・・・」
と控えめにチラシを渡してくれる程度だった。

思えば、陸上部の先輩はこのときから、
2人に「長距離」、「長距離」といっていたような気がする。

「千早も行ってるって言うし、行ってみるかな」

と最初は軽い気持ちからだった。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「・・・・・とおい」

乗馬部のある馬術練習場まで歩く宇麻子。

元陸上部員とは思えない発言だが、
それだけ、彼女は長距離は嫌いだったのだ。

白十字女学院は、有名私立校だけあって、
敷地面積がとても広い。

バスかなにかで移動しなくては、とても
回りきれないような広い敷地を
驚くべきことに生徒達は、歩いて移動している。

自転車通学なども禁止されているわけではないのだか、
利用する生徒の数は驚くほど少ない。

「は~あ、こんな事なら、うちから自転車持ってくるんだった。」

彼女がそんな事を思っていながら歩いていると。

「ヒヒーーーーーン!!!」

という声と共に、レンガ造りの道を疾走してくる・・・・・・物・・・・。

「・・な、なに・・・・・う、うま?・・・・・馬!!!、あああ、こっち来た。」

物凄い勢いで、駆け抜けていく茶色の毛並みをした馬。
その勢いに驚きとし、そのまま通りすぎた後も、
しばらく呆然としてしまった。

「ふぅーーっ、なにあれ?・・・・・・。」

肺の空気をそっくり入れ替えるように
大きく息を吐き出した宇麻子。

その耳に遠くから聞こえる乾いた音。

それはだんだん近づき、

パカッ、パカッパカッパカッ!!と、
レンガを力強く蹴り近づいてくる足音に思わず振向くと予想通り。

「ま、またあ・・・・・・・。」

今度は、白い馬が宇麻子に向かって走ってくる。

さすがに2度目なので余裕ができたのか、今度はじっくり
通り過ぎるのを観察してしまう宇麻子。

白く美しいたてがみのたなびく背中で揺れるのは、学校指定のバック・・・・。
その隙間から見えるのは、学校指定のリボンだろうか。

「なにあれ・・・・・馬の厩舎は、馬術練習場の隣だから・・・・・。
 逃げ出して来たわけじゃないわよね・・・・・。
 それに背負ってたの何?・・・・。
 まさか馬の宅配屋さん?・・・・・なら人が乗ってるか・・・・
 そうだよね・・・・・馬が喋るわけないし・・・・・。」

などと首を傾げていると・・・・・・

「やば、こんな事してる場合じゃない・・・。早く行かないと・・・・。」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

しばらくして、ようやくたどり着いた宇麻子。

「・・・・・・やっとついた~。
 千早の奴・・・・・・よくこれだけ歩いたわね。」

と言っていると・・・・。

「あれ・・・・・・?、宇麻子?どうしたの?」

「え、千早?・・・・・・なんで、あたし、部活見に来たんだけど・・・・・」

「そうなの?・・・・・・今日の部活は、ミーティングだけで終わりだよ。」

「ええええええ!!!」

と大声を上げた宇麻子がみんなの注目を浴びる。

その中の一人が
「あれ・・・・貴女さっきの・・・・・?」
と、声をかけて来たのは先輩の一人。

「副部長?、宇麻子知ってるんですか?」

宇麻子も面識のないその先輩に話しかける千早。

「さっき、あたしが追い抜いて来た子よ。
 危うく『踏みつけ』そうになっちゃって、悪かったね~」

はて、誰かに抜かれただろうか?
『足』を踏まれそうになれば気が付きそうな物だが・・・・・。

「え、・・・・あたし何処で抜かれました?、
 茶色と白の馬には抜かれたけど・・・・他には・・・・」

「あああ、先輩、宇麻子ったら、『まだ』なんです。」
と今度慌てているのは、千早。

「あ、そうなんだ?、ごめん、今の忘れて・・・・。」
と先輩もびっくりしたように、笑顔でそういった。

「???????」

なにがまだなの?と
話に全くついていけない宇麻子。

まるで自分だけが
別の国にでも連れてこられたような感覚でいると・・・。

「おーーい、大道寺!!!何やってるんだ!!!
 お前、遅刻の罰として100週走れ!!!」

と後ろで元気のよい声を出しているのは顧問だろうか。

「えーーー、あたしは間に合ったじゃないですかぁ。」

「仙道田が遅刻したんだから、パートナーのお前も一緒に走れ。」

と言われ、渋々・・・・「はーーーい。」と返事をする。

「じゃあ、千早ちゃん。またね・・・・。」

千早がおじぎすると、先輩は顧問の方へ走っていく。

「ねえ、千早・・・・、乗馬って・・・・チームなの?」

「うううん。違うけど・・・・何で?。」

「今、パートナーって・・・・・・」

「ああ、宇麻子もうちに入ればわかるわよ。」
千早は、応えるとそれ以上は教えてくれなかった。

「それにしても、100週なんて、陸上部並みね・・・・」

「そうかな・・・・そんなに大したことないと思うけど・・・・・」

「え?」
中学時代、三年間、学校のマラソン大会で一度も完走どころか、
時間内にゴールできなかった千早のセリフではない。

そう言おうとする宇麻子。

「ねえ~、帰るよ~。」
という千早は、自分よりも遥か先を歩いていた。

「ああ、待ってよぉ・・・・。」
(この子、いつの間にこんなに足速くなったの?)

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
次の日・・・・・

「おはよー。宇麻子・・・・・・。」

「おはよ。ふあああ、元気いいね。千早。」

「そっかなぁ?~。」
とたわいない話を続けながら、学校までの道のりを歩く。

「やだあ、千早ッたら」
とじゃれあいで軽く背中を叩いた宇麻子。

「痛ッ!!!」
と、しゃがみこむ千早。

「どうしたの?」

心配そうに覗き込む宇麻子に、手を横に振りながら、

「うううん。なんでもない。」
と立ち上がる千早。

だが、なにか、とても痛そうなのは見て取れる。

その後も、注意深く観察して気が付いたのだが、
千早が椅子に座るときなど、不自然な座り方をしている。

まるで背中や、お尻をかばうその姿を不審に思う宇麻子。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ちょ、ちょっと痛い、・・・・痛いってばぁ、どうしたの?宇麻子・・・・」

親友の手を引っ張りトイレの個室に連れ込む宇麻子。

「背中、見せて。」

「え、」

「いいから、みせなさい!!!」

力づくで、千早の制服の上着をたくし上げると・・・・・・。

「なに・・・・・これ・・・・・。」

そこには、白い肌を埋め尽くすような傷、
赤く腫れ上がった線が背中をまた・・・・
隠れて見えないがお尻の方も似たような状態である事が見て取れた。

「どうしたの・・・・・これ・・・・・」
青ざめる宇麻子。

「これ・・・・・なんでもないよ。」
そういいながら、顔を赤くする千早。
しかしそこには、傷や痛みを隠すそぶりもなく・・・・。

まるで、好きな人に裸を見られて、うれしい気持ちと
はずかしい気持ちが両方責め合っているようなそんな表情をしていた。

その異常な千早に。

「なんでもないわけないでしょ。こんなに」
と思わず手が触れてしまい。

「ひん!!、ひーーん。」
痛みに声を上げる千早。

「ご、ごめん。」と謝るも、
千早はそのまま、制服を正し。

「心配しないで宇麻子・・・・。」

とだけ言い残して、千早は、トイレから出て行った。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

放課後、千早が心配になり、こっそりと後をつけて来たのは・・・・。

「厩舎?、でもここって・・・・・」

そういって、物陰から見ていると・・・・・。


位置口の影に隠れる宇麻子の目に入ってきたのは・・・・・。

一列に並ぶ女生徒・・・・・・・・。
その前には、馬用の鞭をもった。先輩部員。

先輩達の見ている目の前で、
制服を脱ぎだす少女達。

その中には、千早の姿ももちろんあった。

(な・・・・・・。)

突然裸になったのも、もちろん驚いたが・・・・・。
それ以上に、背中からお尻にかけておびただしい傷を持った少女達の姿。

(なに・・・・・なにが始まるの・・・・・・・)

ピシン!!!、ピシン!!!と言う何かが当たる音。

「ひん、ひああああああん。ひん、ひん」
「ひひ、ひん、ひああ、ひん、ひん」

と言う女の子の声。

涙を流して声を上げる新入生達を見ながら・・・・・・宇麻子は。

(なにこれ・・・・・いじめ・・・・・・・・)

「先輩・・・・わたし・・・もうだめです。・・・・・」
と鞭を振るう一人が、後ろで監督する人物に懇願する。

「だめよ。、ちゃんとやりなさい。
しっかりと、上下関係を教えてあげなくちゃ駄目なんだから・・・」

(ひどい、・・・・無理やりいじめを強要するなんて・・・・・。)

そう、厳しく言う彼女は・・・・昨日、千早に副部長と言われていた
彼女だった。

昨日は、やさしそうな先輩だった彼女。

しかしその実態は、・・・・・。

「もっと、腰を入れて、振りなさい・・・・そうしないと意味ないでしょ。こう、」
後輩の持つ、鞭を手に取り、思いっきり目の前の尻を叩く。

「ひあああああ・・・・・。」

声を上げる少女。

「ほら、やってみなさい。」
と鞭を投げ渡す。


「はああん、ひん、ひいいいいいいんん。」

副部長に命令され、再び後輩を鞭で叩く少女。
目に涙をうかべ、口からは涎を垂れ流し、声をだすのは・・・・。

(ち、千早・・・・・・・・・。)

恐怖の余り声もでず、鞭を打ち鳴らされ、叩かれつづける親友を置いて、

彼女は、厩舎を後にした。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

次の日・・・・・。

いつもよりも、早く目の覚めた・・・・いや昨日は一睡もできなかった。
頭に響いたのは、親友の痛々しい声と鞭と肌が触れる嫌な音。

一晩泣き明かした目を真っ赤にして彼女は後悔していた

「待ってて、千早・・・・・。あたしが助けてあげる・・・・・・」

まだ、ベットで寝ている
少女の寝顔に誓った宇麻子は、そのまま学校に出かけて行った。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
朝も早い時間の職員室。
教師の数もまだまばらだが・・・・・・・・

宇麻子が目的の人物は既に席に座って授業の準備をしていた。

「あの・・・・天宮先生、お話があります。」

「どうしたの・・・あなたは・・・・えっと・・・・・・」
授業を受け持っているとはいえ、
さすがに新入生全ての顔と名前が一致するほど、時間はたっていない。

「1年C組・・・・・・上里 宇麻子です!!!」

「そ、そうだったわね。で上里さん、どうしたのこんな朝早くに?」
その勢いに気おされる天宮。

「すみません、ここではちょっと・・・・・・・」

「どうした?、あや・・・じゃなかった、天宮センセー・・・・・」
と言うのは体育教師。・・・・・彼女も・・・・・。

「あ、ちょうどよかった・・・・・・国見先生も、
 お話があるんです。乗馬部の事で・・・・・。」

「そう、じゃあ、生徒指導室が空いてるわね、そこでいい?」

「はい。」

天宮の声に力強く答える宇麻子。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「なんだって!!!、うちの部でいじめ!!。」

「はい。あたし、見たんです!!!」

「な、何かの間違いじゃないの?」

教師としては当然の反応かもしれない、
自分の受け持つ部活でいじめがあったのだ、信じられなくて当然だろう。

「いったい何で・・・・・。」

「私、見たんです。先輩達が寄ってたかって、馬の鞭で、
 新入生の背中を・・・お・・・お尻を思いっきり叩いていたんです!!!」

ついに言った、言えたと
教師達の顔を見ると・・・・・。
困惑した顔。

「え、えーーとそれが一体?・・・・どうして・・・・?」
と国見が言う。

2人とも、その行為がさも当たり前のような顔をしている。
そればかりか、なぜ宇麻子が怒っているのか理解できないようだ。

その姿に愕然とする宇麻子。

少しして・・・・。

「は、遥、分かった!!!」

「あ、天宮センセ・・・・どうしたのいきなり・・・・・」
突然名前で呼ばれ、ビックリした国見声が裏返ってしまう。

「ちょっと、嗅いで見なさいよ。この子・・・・まだなのよ。」

そういって、鼻を動かす国見・・・・・。
何かを感じ取った後・・・。

「え・・・・・、ああ、そういうことか・・・。ああ、君の言う事も確かに・・・・・・・。」

「そうよね・・・・・・まだの子が見たら・・・・確かに誤解するのも分かるかも・・・・・」

二人の教師の様子に宇麻子の怒りは頂点に達した。

「まだってなんですか!!!、昨日先輩達も言ってたけど!!!。
 千早が、先輩達に叩かれてるんです。お尻や背中を真っ赤に腫れさせて・・・・。
 それなのに、先生達は何なんですか!!!、もういいです。
 あたし、警察に通報します!!」

「ま、まて、上里・・・・。確かにさっきの先生達の態度は悪かった。
だけど、聞いてくれ、あれはいじめじゃないんだ。」

「だったら、なんだっていうんですか!!!、フーゥ!!、フゥーー、
 あたしの親友がいじめられているんです!!!フゥウウ、フー、
 あたし、先輩達を絶対、許しません。!!!、フー、フー」

肩を大きく上下させ、興奮し鼻息を荒く喋る宇麻子。

ショートカットの髪、むき出しのうなじから生えてくる毛。
大きく膨らんだ中指・・・・・・・。
丸い耳も尖っていっていく。

「フー、フー、フー、フーーーーーー!!」
鼻の穴を大きく膨らませ、息をする宇麻子。

風もないのに、スカートが激しく揺れ動く・・・・。

その様子に、
「貴女の気持ちは、わかったから、ちょっと放課後まで待ってね・・・・・。
 お願い。」

そういって、顔を撫でる天宮・・・・。

「ああ、私達がきっとその問題を解決するから信じてくれ・・・・・」

と頭をなでる国見。

「フー、フー、フー、ふう・・・・・・、ふう・・・・ふう・・・
 ・・・・・・・わかり・・・・・ました・・・・・」

すると、次第に落ち着いていく宇麻子。

首元の毛も、膨らんだ指も、尖った耳もいつの間にか消え
暴れまわっていたスカートもおとなしくなった・・・・。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
放課後、
厩舎に集められた乗馬部員一同。

「いじめ・・・・・。あの・・・・・先生・・・・一体・・・・」
集められた理由に困惑し、思わず顧問の教師に尋ねる部長。

「それについては、彼女から・・・聞いてくれ・・・・。」

顧問の体育教師 国見 遥はそういうと、
後ろに立つ少女に道を譲る。

「私・・・・みたんです。・・・・・ここで、先輩達が
 ・・・・新入生のみんなを鞭で叩いているのを・・・・これは紛れもない。いじめじゃあ・・・」

そう言い掛けた宇麻子に・・・・・
「違うの・・・、宇麻子。あれは練習なの・・・。」

「あれのどこが練習なの!!!」

「聴いて宇麻子・・・・まだ『人間』の貴女にはわからないけど
 あれは立派な練習なの、私達が『乗用馬』になるために・・・・・」

「なに・・・・言ってるの?・・・・千早・・・・。」

「福山!!」
 大声で千早を制する体育教師。

「千早ちゃん。・・・・ 」
「福山さん・・・・・。」
部長ともう一人の顧問、天宮も心配そうに声を掛ける。

「先生・・・・部長・・・・ごめんなさい。
 ・・・・無理はいけないんですよね・・・。
 でも、私・・・。
 もう宇麻子を仲間はずれになんてできません。
 お願いです。宇麻子を・・・・練習に加えてください!!!」

涙ながらに訴える千早。

「わかったわ・・・、私にも、福山さんの気持ちよくわかる・・・・。
 先生・・・いいですよね?」

そういって、顧問たちに訴える部長。

「お前が部長だ。お前がそれでいいなら、何も言わない。
 でも無理はさせるな。・・・・・まあ、私達も見ててやるから・・・」

と国見が答え、天宮も、笑顔でうなずく。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

厩舎の中では、裸の少女達。

四つん這いになり、背中には、重たそうな馬の鞍。
そして、口には手綱が付けられている。

「な、なにしてるんですか!!!」
思わずそういう宇麻子。

「なにって・・・・練習よ。」

「これって!!。」

「さあ、宇麻子ちゃんも・・・・。」

「ちょ、ちょっと、やめてよ。」
そういう少女を無理やり脱がしているのは、
部長、副部長のコンビ。

代わる代わる、一人が押さえつけ、
服を脱がせる

腕力に自信があるわけではないが、
それでも、たった一人の女の子に簡単に
押さえ込まれる姿に戸惑う。

「大丈夫。」

「大丈夫だから・・・・。」

そうやって、無理やり四つん這いにさせ、
背中に重たい鞍を載せる。

縛りつけられた鞍の重さで立ち上がれない彼女の
口の周りに、くつわが付けられる。

「ふん、ふむ、ふむううう・・・・・。」

「あともうちょっとだから、我慢して・・・・」

そうやさしく言う先輩。

「ひん、ひん、ひん、ひん。」

両手、両足を地面について、裸で
練習場を歩く、少女達。その上には、乗馬服を着た少女達。

「ほら、宇麻子ちゃんも、走って・・・・」

「むう・・・むうう・・・・」

「さあ、恥ずかしがらないで・・・・、」
と声を掛けてきたのは、教師天宮。
その下には、大きな胸を揺らした全裸の女性・・・・・ 体育教師 国見だった。

「む、むう???」
(く、国見先生・・・・・・)
強気の体育教師の上に
普段おとなしい様子の天宮が乗っかっている様子は、
宇麻子は衝撃を受ける。


「さあ、遥、いくわよ。!!!」
と鞍の足を蹴り、そのあと、鞭を入れる。

「む、ひひ、ひひーーーん。」
奇妙な声をあげ、国見は、走り出す。

上に人を乗せている事を感じさせない速さ。

(なんで・・・、そんなにはやく・・・・・。)

鞭でお尻を叩かれつつ、背中に先輩を乗せた
新入生達が、芝の練習場を走る。

走るスピードが速くなるにつれ
乗っかられている女性達に変化が・・・。


大きく揺れる女性教師の胸が、
腰の方に移動しながら、筋肉の中に埋もれていく。

小柄な千早の腕が、足が太くなり、
2足歩行に適した骨格は、4つ足に適した物に変化し、

揺れるお尻からも、太い毛で作られた尻尾が、
根元よりもされに揺れる。

「むふーー、ひひ、ひひん、ひん、ひん・・・。」

宇麻子の周りをすさまじい速さで駆け抜けいく『少女達』

その喉から発せられる声は、次第に・・・・。

「「「ひん、ひひ、ブルルル、ひひ・・・・・・ヒヒーーーーーン!!」

「ヒヒーーン、ブルルルル、ブルルルルルルル!!!」
(ほら、早くしろ・・・、上里・・・・。早く自分の本当の姿を思い出すんだ。)
黒い馬が、国見の声で語り掛けてくる。

「ヒンヒンヒーーーン、ヒーン!!!!!」
(宇麻子・・・・、走るの気持ちいいよ、楽しいよ。
 ・・・だから・・・宇麻子も一緒に・・・・・・・。)
茶色の毛に覆われた馬が、宇麻子の方を向く。

「「「ヒヒーーン」」」」
(上里さん、頑張って!!!)

「あ、・・・・・あ・・・・・」
馬の言葉がわかる、それまでどれも一緒に見えていた馬たちの
個性がわかるようになってくる。

それは、人で言う
髪型が違い、肌の色の違い、顔かたちの違いのように
細かい所まで個々の馬たちの特徴を彼女は捕らえられるようになった。

鞭を振られ、声を上げて走る馬たち・・・・。

その様子に興奮し始める宇麻子。

「フー、フー、フー、」
鼻息の荒い少女のお尻から、フルンと毛ダマリがゆれる。

それを確認した乗馬部部長は、彼女のお尻に鞭を入れる。


「ひひひーーーん!!!」

そのまま、飛び出す宇麻子。
(痛い、でも・・・・もっと、もっと叩いてほしい・・・・・叩かれるたびに
 あたし・・・・・はやく走れるもん。・・・・もっと、もっと早く、ひん、ひひん。)

その声が聞こえるかのように・・・・鞭を振る部長。

ビシン、ビシン!!!

(いいでしょ。・・・・宇麻子ちゃん。もっと、もっと早く走れるように叩いてあげる。)
叩く音が、痛みが・・・部長の言葉ではなく気持ちが伝わってくるようだった。

(はい、先輩、もっともっと、あたしを・・・・あたしももっと早く走ります。
 先輩!!、見てて下さい。)


「ヒヒヒーーーン!!!!」

駆け出した少女の全身が白い毛に覆われると、
誰よりも早く練習場を走っていく・・・・・。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「どう宇麻子・・・・。」
そういって、ルームメイトの赤く腫れたお尻を舐める。

「ひ・・・ヒン、ヒヒン!!」
声を出すのは、馬の頭、尻尾と手足に蹄を持った少女。

ガブゥ

少し平らな歯が並んだ少女が甘がみする。
「ヒン!!!」
「もうだめでしょ。この寮には『人間』の女の子もいるんだから・・・。」

「ブルルルル・・・・。」
(ごめんなさい・・・・でも気持ちいい・・・。千早・・・・もっとお・・・・)

「もう、宇麻子かわいい・・・・。ブルルルル、ヒン!!」

そういった彼女の口元が前に出て、茶色の馬面が姿を現す。

2頭の馬少女達は、尻尾をふりながら、自分達の体を舐め、
ときには、甘がみをして、お互いに気持ちよくしていくこうとしていく。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
宇麻子が乗馬部に入って数日。

疑問に思った事を先輩にぶつける。

「あの・・・・部長さん。・・・・あのどうしてこういう練習しないといないんですか?」

「そうねえ・・・・・・・上里さん。貴女は人?、馬?どっち?」

「え?、馬です。」

少し驚いたが即答した、
どちらかというと頭で考えるよりも、
喉の方が先に答えを言ってくれた感じだ。

「そうね。じゃあ、貴女の今の姿・・・・。『人間に変身』してるって感覚ある?」

「え、・・・・えーと・・・・・・・・・・・・
よく・・・・わかりません。」

自分は馬だ。それは自信を持ってそういえる。

そうならばこの姿は、仮の物と・・・・頭では理解できるが、
なぜかそういう気分にならない。

「そう、貴女はあの日、人から馬になったわ。
 でもだからってすぐにそれに適応できるわけじゃない。・・・・・
 前脚の動かし方、後脚の蹴り方、広い視野の捉え方・・・
 体重だって、10倍以上も違うの・・・・・。わかるわね。

「はい・・・。」
長くなった腕、4つの足は、手とも足とも違う
爪先立ちで走る。

その感覚は、人間の時には味わえなかった感覚だ。

「・・・・・それらは貴女が16年で培った人間の体の動かし方とは違うの。
 今のまま、馬の姿で走ったら、転んだり、蹄が割れちゃうわ・・・・・。
 そうならないためにも・・・・じっくり慣らしていかなくちゃいけないの・・・。
 乗用馬は、人を乗せて走る・・・・大事なパートナーに怪我をさせないためにも、
 体でそれを覚えなくちゃ・・・・。」


そういって、千早の方に視線を送る。

それに気が付いた宇麻子。

「はい、わかりました。」

笑顔の少女。

彼女が馬として、友人を乗せる姿が見れるのは、
もう少し経ってからのようだ。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

いじめとしごき・・・・その決定的な違いは、
愛情だろう。

思いのあるしごきは、
受けている方にも、その思いは伝わる。

受ける者は、思いに答えるために
次のステップに進もうと歯を食いしばって頑張る。

そうやって人は成長していくものだ。

感情を表に出して、憎しみをもってしまえば、
しごきも、いじめに変わってしまう。

人を教育するもの、訓練するものは
それを忘れてはならない。

	
おわり
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