ダークサイドFILE No.01
覚醒
作者:DarkStar
ダークサイド ・ ・ ・ ・ ・ それは、 心まで獣に堕ちてしまった獣人たち
だが、 そのきっかけは、 いつもちいさなもの ・ ・ ・ ・ ・ ・
「なによ、 その態度、 あんた、 生意気なのよ!!!」
「そーよ、 そーよ。」
「そ、 そんな、 ・ ・ ・ ・ 私は ・ ・ ・ 」
3 人の女の子たちに囲まれていじめられている女の子。いつもの事なのだろうか周りに居る者たちも、 留めに入る様者はない。
キーンコーン、 カーンコーン
「ねねぇ。次、 移動教室じゃなかった?」
「そうね、 こんな子ほっといていきましょ。」
とその場を離れるいじめっ子達。
「それにしても、 なんなんだろうね。あの子。」
「ホントなんか、 一緒にいるとおちつかないのよねぇ。」
などと話しながら、 次の教室に向かっていった。
「美代ちゃん、 だいじょうぶ?」
いじめられた女の子に近寄り心配そうに顔を覗き込む、 気の弱そうな女の子
「大丈夫だよ」
親友に心配をかけまいと笑顔を作る美代。
「ごめんね。私、 わたし ・ ・ 」
今にも泣きそうな顔の女の子に美代はやさしく声を掛ける。
「いいよ。止めに入ったら、 また香乃ちゃんまでいじめられちゃうもん。」
香乃と呼ばれた女の子も、 先ほどのいじめっ子達の陰湿ないじめにさらされている一人だ。美代としては、 自分と同じ思いを彼女に味わってほしくなかった。
「ほら、 私達も早く行かないと ・ ・ ・ 次の授業遅れちゃうよ。 ・ ・ ・ ・ 」
「う ・ ・ ・ うん。」
彼女達のいじめが始まったのは、 春にクラス替えがあって以来だ。
いじめっ子のリーダー格、 高野理恵は成績も運動神経もいい。普段は穏やかな彼女だが、 こと美代と香乃のことになるとなぜか、 他の子達と態度が変わりなにかにつけ因縁をつけ、 陰湿にいじめる。普段、 友達付き合いもよくクラスでも人気がある彼女がまさか、 いじめをしてるとは、 教師達も思っていなかった。
放課後となり、 人気のなくなった教室で、 一人自分の机を探している美代。
「おかしいな、 さっきまでは確かにあったのに ・ ・ ・ ・ 」
するとそこへ、
「あら、 三宅さん、 どうしたの?」
と如何にもわざとらしく、 声を掛けたのは、 理恵達だった。
「た、 高野さん。」
自分達以外に誰も居ない状況でいじめっ子達と一緒。早くこの場を離れたい美代だが、 探し物は見つからない。
「なにを探してらっしゃるの?ひょっとして、 これかしら。」
後ろ手に隠していた物を美代の前に差し出す理恵。
それは、 美代がさがしていたリボンだった。校則に違反しないような地味なリボンだが、 美代はこのリボンを気に入っていた。
「か、 返して、」 手を伸ばして、 取り返そうとする美代をひらりとかわし、 取り巻きの一人に、 リボンをパスする。
美代が近付くと次々にパスし、 美代を翻弄する。
「返して、 それ、 大事なリボンなの!!!」
美代が必死になれば、 なるほど面白がって、 リボンを回すいじめっ子達。
再び、 理恵に飛び掛る美代の手が理恵の顔をすり抜け、 ついにリボンを掠め取る。
しかし、
たらり ・ ・ ・ ・
「え、 ・ ・ ・ ・ 」
理恵の頬を赤い液体が滴る。
「り、 理恵、 顔から血が ・ ・ ・ 」
その声に、 理恵が頬をさわると
「いやああ、 わ、 私の顔に ・ ・ ・ 傷が ・ ・ ・ 」
その大きな声にビックリした美代が理恵の顔を触って ・ ・ ・
「だ、 大丈夫、 高野さん。」
「ちょっとさわんないでよ。だいたいあなたのせいでしょ。」
と理恵は、 美代の手を払う。
「ごめんなさい、 私、 そんなつもりじゃあ。」 と自分の手についた理恵の血を見た美代は、 ぼーっとしたかと思うと。突然、 理恵の血を舐める。
なんだろ、 これ、 血?、 血ってこんなに甘いの?もっと、 もっとほしい。ほしいよぉ。
突然自分の指をしゃぶりだす美代に理恵は
「な、 なんなのこの子!!」
「ねえ、 たかのさん。、 あなたの血ぃのみゃあせて」
と甘えるような声の美代の体に変化が起こる。
耳が尖り、 スカートの中がもぞもぞ、 動いている。
爪が伸び、 目がらんらんと光る
そんな美代の異様な様子に、 恐怖を感じ、
「い、 いやああああ ・ ・ ・ ・ 」
と悲鳴を上げて逃げ出す理恵。
「ま、 まってよ、 理恵 ・ ・ ・ ・ 」
残る 2 人も慌ててその後を追いかける。
「あ、 まって、 待ってよ。たかのさーん。」
のんびりした声だが、 美代の足取りは軽く、 3 人を追いかける。
「はぁはぁなんなのよ一体あの子。」
「ああ、 もう追いついてきた。」
学校中を逃げ回る 3 人。いつもの美代の足ならとっくに 3 人が逃げ切っているのに、 今日の彼女は信じられないスピードで追いかけてくる。
「うにゃああああおおおお。」
まるで猫のような声を上げる美代に 3 人は、 恐怖し
「いや、 こ、 こないで ・ ・ ・ ・ 」
と言う理恵のスカートから、 長く伸びた渦巻状のものが伸びると、 地面に両手を付き、 四つん這いで走り始める。 残る 2 人も理恵と同じような変化が起き、 共に四足で逃げる。
普通なら、 人間の四足歩きなど決して速くはないのだが、 今の三人は、 人の足の速さを遥かに上回るスピードをだす。
追いかける美代も、 手を前に付き、 毛の覆った尻尾が飛び出すと、 3 人に追いつかんばかりの速さで走り出す。
一方、 忘れ物を取りに行くといったきりなかなか戻ってこない美代を心配していた親友の香乃。
「美代ちゃんどうしたんだろ ・ ・ ・ ・ 」
そんな香乃の耳に聞こえる
「いや、 いやぁああああああ」 と言う悲鳴と
「うにゃああああああおおおおお」 という獣のような声
「み、 美代ちゃん。」 そうつぶやくと、 香乃は、 声の方へ向かって走り出す。
追い詰められていく理恵たち、 その後ろから、 3 人にゆっくり近付く美代。
その時、 理恵のすぐ後ろを走っていた女の子が転ぶ。
「信子!!!」 理恵が声を掛けたときには、 既に彼女の上には、 美代が乗りかかっていた。
頭から、 三角の耳を立て、 するどくなった爪で獲物をしとめている美代の顔に白や茶色の毛が覆うと鼻先が三角形の形に迫り出し、 前方に突き出していく。
それと同じくして、
「いや、 いやー、 お願いたちゅけて、 たちゅ、 ちゅう、 チューチューチュー」
悲鳴を上げていた女の子の声は、 いつしか、 ネズミの鳴き声に変わり、 頭部もネズミのそれに変化していく。
「そ、 そんな、 三宅さんが猫に、 ・ ・ ・ ・
信子が ・ ・ ・ ネズミに ・ ・ ・ ・
・ ・ ・ ・ り、 理恵、 ・ ・ ・ ・ なにその尻尾」
その時になって初めて彼女達は、 自分達の頭から丸い耳と、 長い尻尾が生えている事に気が付く。
「なに、 なによ。これ?、 どういうこと?」
「どうしたの、 美代ちゃん!!!」 その場に現れる香乃。
「ニャア?」 と声を上げて、 香乃の方を見る美代。しかし、 すぐに自分の捕らえたネズミに向き直るとその首もとに ・ ・ ・ ・
ガブゥ!!!!
「チュ、 チューーーーー」
ガクッ!!!
美代が噛み付くと辺りに血の匂いと大きな悲鳴がこだました後すぐに収まると美代は、 ネズミの死体にかぶりつく。
「信子、 信子おーーーーーーー!!!」
理恵達の悲鳴響く中
ぶちゅ、 ぶちゅと肉がつぶれる音をさせながら、 美代は、 肉を食み、 血をすする。
「み、 美代ちゃん、 そのネズミ、 おいしいい?
おいしいの?、 私も、 ・ ・ ・ ・ ・
・ ・ ・ あ、 あんなトコにもねずみが ・ ・ ・ 」
「え、」
と理恵が振り向くと隣にいた少女は全身をすっかりネズミの姿に変えていた。
「チュ、 チューチューーーー」
「そんな、 明衣までネズミに」
といった次の瞬間には、 黒い尻尾が視界をよぎる。
「ニャアアアアオオオオオ」
猫の耳と尻尾を生やした香乃がネズミに変わった明衣にかぶりつく。
明衣は、 悲鳴も上げられぬまま、 うごかなくなり、
かたや、 香乃は血にそまった、 口元から大きく開き控えめな女の子の口から鋭い牙が生える。
餌を貪りながら、 少女達から獣毛が生え、
美代は三毛、 香乃には黒毛が全身を覆う頃には、 人間大の巨大な猫が同じく等身大のネズミを喰らっていた。
「いや、 いやあああ、 いやああ」
シャーーーーーージワッ
腰を抜かし、 恐怖のあまり失禁してしまった理恵。
ガクガクと震えながら、 声も出せずにただただ肉塊に変わっていく友人を見つめていた。
獲物をあらかた食べ終え三毛猫と黒猫が互いに体を摺り寄せる合うようになってから、 ようやく動けるようになった理恵がこっそりと逃げようと這いつくばっていると
その動きに反応した捕食者達は、 腹がみたされないのか、 さらなる獲物を求める。
既に全身が灰色の毛に覆われ手足も変化してしまいまだかろうじて人の形を残した顔の理恵が
三毛猫に向かって、
「おねがい、 三宅さん、 おねがいだから、 ゆるして!!!ゆるちゅて、 ゆるちゅ、 チューチューチューチュー」
その声がネズミの鳴き声に変わるのと同じく理恵の鼻先が伸びだし、 ネズミの顔が形成される頃には、
新たな獲物に歓喜する二匹の猫達
「チューチューチュー!!!!!!」 校舎中に木霊すネズミの悲鳴。
夕焼けから完全に夜の闇が覆いつくす頃。お互いの口元の血を舐めあい毛づくろいをはじめる二匹の猫。
その身体は徐々に縮んでゆき普通の猫と変わらぬ大きさになっていく ・ ・ ・ 。
じゃれていた二匹の猫が突然びくっと、 何かに反応するとおもむろに駆け出す。
その影は忽ち闇へと消え去ってしまった。
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以下は、 ダークサイド記録より抜粋。
○県 □市にて、 猫のダークサイド2匹の発生を確認。
このダークサイドは、 同市内公立高校の女子高生が、 ダークサイド化したと思われる。
このダークサイドは、 この同級生からいじめを受けており、 精神的ストレス状態と、 獣化覚醒のショックにより、 ダークサイド化した模様。
また、 いじめていた女子高生も、 獣化覚醒が起こり、 彼女らが共にネズミであった事も、 事件の一要因として考えられる。
合わせて、 事件当時に校舎内がほぼ無人状態であった事。その上、 獣化した者たちに関する目撃者が全く居なかった事も、 疑問が残る。
この点については、 引き続き調査の必要を要する。
現在、 このダークサイドによるさらなる被害はでていないようだが、 行動分析によると、 精神がほぼ獣になっており元に戻る可能性は薄いと思われる。