リクエスト 作品 No.03
碧ちゃんといっしょ・・・
作者:DarkStar
この作品は、わりかん さんのリクエストを元にDarkStarが、作成した作品です。
「これで本当にお別れなんだね ・ ・ ・ ・ ・ 碧ちゃん。 」
イグアナを抱えた愛奈は、 転送装置の前に立つ女性 ・ ・ ・ 愛菜。
一人暮らしのさみしさから、 買い始めたイグアナ
泣き声もあげず、 他の爬虫類と比べてもタフなその生き物は、
はじめこそ、 イカツイ顔に驚かされる事もありながら、
時折みせるかわいらしい顔に、
次第に彼女の心は癒されていった。
しかし ・ ・ ・ ・ ・ 。
『俺、 動物苦手なんだ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 』
所詮ペットより男と言うなかれ、
彼女としても、 断腸の思いでのイグアナとの別れなのだから。
そして、 イグアナを捨てるために彼女がやってきたここは ・ ・ ・ 。
さまざまなペットが飼われるようになって数十年。
多種多様なペット達が飼われたがそれによって起こった弊害が、
買主が勝手に捨てたペットの野生化。
そうしたペットたちが人間に襲い掛かるといった事件も増えてきた。
そこで近年物資輸送のために開発された
物質転送装置により、 ペットを元の生息地に返すという運動が活発化し、
彼女もそれに習って、 家から一番近くにある転送所までやってきたのだった。
自分が飼えなくなったのならば、 せめて生まれ故郷に帰してあげたい。
ただ、 ペットの間人から餌をもらうことのなれてしまったイグアナが厳しい
自然環境の中で、 生きていけるのか不安もある。
「いいですか、 稼動中の転送装置の中に入らないでください。
一緒に飛ばされてしまいますから ・ ・ ・ ・ 」
係員が、 注意事項をいい、 立ち去る。
「じゃあ、 碧ちゃん、 ばいばい ・ ・ ・ ・ 。」
涙をこらえ、 イグアナに向き合う。
転送装置が光に包まれ、 ピンク色の光が、
イグアナの体を覆っていく。
愛菜を見つめたイグアナの目が寂しそうに細められたとき、
「や、 ・ ・ ・ ・ やっぱりだめ、 碧ちゃん!!!」
その姿に愛菜は、 転送装置へ駆け出す。
イグアナの体は、 すでに半分以上が透け、
まるで幽霊のようにその存在は空ろになっている。
それにかまわず、 入っていき同じ光を浴びる愛菜。
目の前で、 薄っすらと消えていくイグアナ。
その体に触れた愛奈の手もスーッと解けるように消え始め、
装置の中に消えていった。
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
ねっとりとした風が、 愛奈の体に吹き付けられる
( ・ ・ ・ ・ ん ・ ・ ここは ・ ・ ・ ・ 。)
意識を取り戻した愛奈 ・ ・ ・ ・ ・
見渡す限りを緑色の木々に覆われている
(ここって ・ ・ ・ ・ ・ そうか ・ ・ ・ ・ あたし碧ちゃんと一緒に飛ばされちゃったんだ)
熱帯の生暖かい風がここが彼女が元いた世界とは違うことを物語っていた。
(そうだ ・ ・ ・ ・ 碧ちゃんを探さなきゃ ・ ・ ・ ・ )
そう思い、 愛菜が声を上げた瞬間
「ギィーーー!!!、 ギィーーー!!」
すぐ近くから聞こえるイグアナの鳴き声
(よかった近くにいるのね碧ちゃん!!)
「ギィーーー!!!、 ギィ!!!」
しかし、 いくら声はすれども姿は見えず、
体を動かして、 地面に生えた草を掻き分けて探す彼女の視界に入ってくる
緑色の物体。
マジマジとソレを見る、 太い棒状のそれから枝分かれした五本が
愛菜の意思を持って動いている。
(キャーーーー!!!!)
そうあげた愛菜の悲鳴は、 ・ ・ ・ ・ ・ ・
「ギィーーーーー!!!!」
(え?)
ごつごつとした自分の指で顔を触る。
鼻は潰れて口と一体化し、 その中には、 鋭い牙が無数に生えている。
彼女の整ったストレートヘアーは影も形もなく、
頭からトサカのようなものが天を向いてそびえ立っている。
「ギィーーーー!!!、 ギィーーーーー」
(そんな、 まさかあたし、 碧ちゃんと ・ ・ ・ ・ )
そう空間転移の際、 飛び込んでしまった愛菜。
物質転送の原理は、 一旦装置内の物質を量子レベルまで分解し、
それらを光速移動させる。
指定座標到達した後、 物質を復元するのだが、
どうやら、 その過程で愛菜と碧の体が融合してしまったようだ。
「ギィイイイイィ!!!ギィ!!!」
(どうしよう!!!、 どうしよう!!!)
困惑し、 首を振り、 4 本の手を動かし、 そしてもう一本の ・ ・ ・ ・ 尻尾を振るう姿
しかし、 はたから見たそれは、 巨大なイグアナ。
(あいな ・ ・ ・ ・ ・ コレデ、 ズットイッショ ・ ・ ・ ・ ダヨ!!!)
頭に響く声 ・ ・ ・ ・ ・ 聞いた事のないそれが愛菜には、 誰のものだかわかった。
(そっか、 私 ・ ・ ・ 碧ちゃんとずっと一緒に居られるんだ ・ ・ ・ ・ 。)
ミドリの声に安堵する愛菜は、 次第になにか深いところに体を突き落とされるような感覚
(ああああ、 すてき ・ ・ ・ ・ ・ あたしと ・ ・ ・ ・ ・
ミドリちゃんが ・ ・ ・ ・ ・ ・ マジリアッテいく ・ ・ ・ ・ ・ )
昏倒するようになりながら、 意識が薄れて行く感覚。
(そうだ ・ ・ ・ ・ アタシ ・ ・ ・ ・ ギィ ・ ・ ・ ・ イグアナ ・ ・ ・ ・ ・ ギィイイイ!!!!)
イグアナと完全に融合した愛菜には、 すでに 「ヒト」 としての感情、 思考はなくなっていた。
「ギィィ!!!!、 ギィイイイ!!!!」
(おなかすいた、 餌 ・ ・ ・ 探さないと ・ ・ ・ ・ 。)
愛菜が、 行方不明になって次の日の朝刊。
顔を塞ぎこんだ男の写真と共に一面を飾っていったのは、
『転送装置で行方不明!? 職員の安全管理のズサンさが明らかに』
という記事であった。
恋人が行方不明になってしまった男の叫びも、
管理体制を国やマスコミから非難された企業の幹部たちの嘆きも、
遠く離れた地の巨大イグアナにはまったく関係ないことだった。