その他の獣化作品 No.26
聖騎士の憂鬱 後編
作者:DarkStar
「あんたとこうして二人っきりになるのって、
あたしがあんたの部隊に配属された時かしら ・ ・ ・ ・ ・ ・ 」
「そ、 そうかな ・ ・ ・ ・ そうだったっけ」
久々のシチュエーションに戸惑うルシアンを他所に、 気楽に話を続けるセリス。
「そうよ。従騎士養成所の卒業式以来、 顔を合わせていなかった幼馴染に
いきなり、 誰だっけ?っていったのは誰だったかしら ・ ・ ・ ・ 。」
遠くを見るように目を細めながら、
それに関しては、 一生の不覚と反省している。
ただ、 彼にも言い分はあるのだが、 それは決して彼女に言うことなどできない。
それは実は、 つい最近の事、
魔物退治のため、 補充要因として弓闘士を呼ぶ事になったのだが、
それが、 まさかセリスだとはルシアンも思っていなかった。
確かに、 従騎士養成所の卒業後の進路について、
ルシアンは、 得意な剣術を生かした剣闘士。
セリスも、 特技を生かした弓闘士になった事は知って居たが、
従騎士から、 騎士になって一度も一緒にならなかった二人が、
まさかここ一番の任務と言うところで同じ部隊になるとは
思っても見なかったのだ。
「まったく、 たった5年で幼馴染の顔を忘れる人なんて信じられないわ。
何年一緒に居ると思っていると思ってんのよ!」
その5年が、 天地を分ける5年だとルシアンは声を大にして言いたい。
あの乱暴者の幼馴染が、 たった5年であんなに変わるなんて思いもよらなかった。
それまで、 ぺったんこだった胸が倍どころでは済まないほどに膨らみ、
肩までだった髪が腰まで伸びている。
あどけなさの残った顔が大人の女の顔に変わっているだから、
一瞬分からなかったことくらい見逃してほしいとルシアンは思った。
結局それでヘソを曲げてしまったセリスは、 一週間ほどまともに口を聞いてくれなかった。
「まあ、 いいわ、 で、 話って何?」
終始彼女のペースだ。
「明日の聖騎士の式典の事なんだけど ・ ・ ・ ・ 。」
やっと自分のペースに持っていけるほど、 二人の間の上下関係は、 小さくない。
実際の役職上ではセリスはルシアンの部下になるのだが ・ ・ ・ ・ 。
「ああ、 そうね ・ ・ ・ ・ あ、 ・ ・ ・ ・ ・ 面と向かって言うのは、 初めてだったわね。
その ・ ・ ・ ・ お、 おめでとう ・ ・ ・ 。」
「あ、 うん。ありがとう。」
お互いになんとなく気恥ずかしさが先立って、 話が途切れてしまった。
「それであたしに何のようなの?」
ここまで話を聞いていてそこまで言うの?とルシアンは言いたかったが、
それまでの自分たちの溝の深さを改めてしったように青年は言葉を選んで話し始める。
「明日の、 俺 ・ ・ ・ いや、 僕のパートナーの事なんだ ・ ・ ・ ・ 。」
いつもとは、 あえて一人称を変えて話してみる。
隊長だなんだと、 他人から舐められないように使い始めたそれを止め、
改めて、 素直な自分の姿を彼女にさらけ出す。
「ああ、 そうね、 パートナーね。」
そう言ったセリスは、 目を伏せてルシアンと顔を合わせないようにする。
「パートナー選びって、 あんたみたいにモテる男はつらいわよね~。
あたしには、 あんたの鼻が伸びる姿が眼に浮かぶようだわ。」
「鼻を伸ばす」 というのは、 『人』 でいう所の 「鼻の下を伸ばす」 と言う事と同じ意味だ。
綺麗な相手に見とれて、 『馬』 の本性をさらしてしまい、 馬面になる様子から、
この国ではそのような慣用句が使われるようになった。
「僕はぜんぜんモテないよ。」
「そんなことないわよ。
例えば、 大司祭のシルビア様とか?」
「あの方とは、 身分が違いすぎるよ。」
「でも、 あんたああいう、 物静かなタイプが好きなんでしょ。
それに、 なんかこう守ってあげたくなるような娘の事。」
「別にそんな事は。」
「どうだか~、 少なくとも、 あっちは絶対あんたに気があるわよ。
あたしが言うんだから間違いないわよ。」
「そんなことないと思うけどな。」
「じゃ、 じゃあ、 エイミーは?
あの娘、 他の 『馬』 とあんたとじゃあ、 接し方。ぜんぜん違うもの ・ ・ ・ ・ ・ 」
「彼女には単に好かれてないと思うけど ・ ・ ・ 。けんかばっかりしてるし ・ ・ ・ 」
「あれは、 じゃれてるだけじゃない。気がある証拠よ。
それに、 あの娘、 黒毛であんたと同色でしょ ・ ・ ・ 、 お似合いじゃない。」
「いまどき、 毛並みの色なんか気にしている奴なんて居ないよ」
古い慣習ではあるが、 人馬族の中には、 お互いの毛色について、
結婚相手選びの絶対的な条件に上げる 『馬』 もわずかならかにいるが
少なくともルシアンはそのような事を気にかけたことはない。
「え~、 気になるわよ。やっぱり~、
同色の同士の方が、 子供の毛並みが段違いによくなるもの」
(セリスって毛並みなんか気にする性格だったんだ ・ ・ ・ なんとなく不安だな ・ ・ 。)
幼馴染の意外な一面に一抹の不安を覚える。
「彼女とは、 なんとなく 『馬』 が合わない気がするんだよね」
「じゃ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ じゃあ、 リーナちゃんは?
将来有望だし、 とってもかわいいし、 あんたも、
あの娘の事結構気にかけてあげてるじゃない。」
「そりゃあそうだけど、 リーナちゃんは、 妹みたいなもんだからね。
どうしても異性としてはみれないよ」
「ふーん、 で、 結局あんたは、 誰をパートナーにしたいの、
それを相談したくて、 幼馴染のあたしを呼び出したんでしょ?」
「あたしとしては、 本命シルビア様、 対抗リーナちゃん
単穴でエイミーかな?」
「もう 『一頭』 いるよ ・ ・ ・ ・ ・ 」
「え ・ ・ ・ 誰?、 あたしの知らない 『馬』 ?」
ルシアンはだた黙ってじっと、 セリスを見つめる
「え ・ ・ ・ ・ あ ・ ・ ・ ・ あたし、 なわけないか、 あたしなんて、 問題外もいい所の
無印馬でしょ。」
押し黙るルシアンに、 セリスはまくし立てるように
「あ、 あたし、 がさつだしシルビア様みたいに、 おしとやかじゃないし、
弓闘士だから、 エイミーみたいにあんたの事近くで守ってあげられなかったし、
頭もよくないから、 戦術の相談とかして上げられなかったし ・ ・ ・ 。
リーナちゃんみたいにかわいくも、 優秀でもないし ・ ・ ・ ・ ・ ・ 。」
それは、 セリスの抱えるコンプレックス。
自虐的なそれは、 自分は彼女たちには勝てないという強い敗北感が伺える。
「セリス ・ ・ ・ 、 十年前の ・ ・ ・ 聖騎士の式典。あの時の事覚えてる」
「なによいきなり。」
「あの時、 僕はセリスの事。怒らせちゃったよね。 ・ ・ ・ ・ そのあの時は、 本当にごめん。」
といきなり深々と頭を下げるルシアンの行動に面食らうセリス。
「そ、 そうだったかしら ・ ・ ・ ・ 。ていうか、 どうして今さらそんな話 ・ ・ ・ ・ 。」
「あの時からだと思うんだ。セリス、 僕の事 ・ ・ ・ ・ 名前で呼んでくれなくなったでしょ。」
ゆっくりと頭を上げたルシアンが、 少しさみしそうな
「!!!!!」
セリスは、 驚きに目を見開いたまま、 凍りついたように立ち尽くしている。
「あの時の僕の一言が、 セリスを傷つけてしまったんだよね」
セリスは無言のまま。
「僕はセリスに、 その事を謝りたい。
そして僕の事を名前で呼んでほしい。
きみは、 僕にとって一番大切な馬だから。
今日言いたかったのはそれと ・ ・ ・ ・ あともう一つ。」
「僕はあした、 僕の大切な 『馬』 の以外には絶対に乗らない。
もし、 その 『馬』 が、 厩舎に来てくれないなら僕は歩いてパレードにでるよ」
その一言で、 セリスの顔は顔面蒼白になる。
歩いて、 パレードを行う事は、 一生を国にささげ独身を貫くと、
国民全員に約束する事だ。
それの誓いはルシアンから、 一生逃れるのない重荷となってしまう。
「ね、 ねえ、 あんたは、 それでいいの。」
あせりを隠せないようすで、 ルシアンに詰め寄るセリス。だが ・ ・ ・ 。
「あ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 」
そういった後で、 すぐに自分の発した言葉を後悔する
「セリス明日でいいよ。僕はずっと待っているから ・ ・ ・ ・ 。」
そのままセリスに背を向けて手を振りながら、 歩いていってしまうルシアン。
「 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ルシアン ・ ・ ・ 」
彼女が切なそうに小声でそういったときには、 既に彼の姿は彼方へと消えてしまった後だった。
次の日、 朝。
パレードに対する緊張よりも、 『想い馬』 が果たして自分を待っていてくれるのか、
それが心配で結局ルシアンは、 一睡もできなかった。
堪えていても自然とでてきてしまうあくびをかみ殺して、
厩舎の中に足を踏み入れる。
(すごいな ・ ・ ・ ・ 雌の匂いが小屋中に充満してる ・ ・ ・ ・ 。)
雌馬しか居ない厩舎は、 『雄』 であるルシアンにとって、
とても刺激的な場所となっている。
厩舎内は、 ルシアンの花嫁になろうと、 多くの雌馬達が入っている。
ほとんどが、 『鼻覚えのない』 雌ばかりだったが、
奥の方に行くに従って少しは、 『知った匂い』 が感じられるようになり ・ ・ ・ ・ 。
馬の姿もよく知った、 者たちも姿を見せ始めた。
美しい金色の長い鬣を揺らす、 絹糸のように白い毛並みの馬。
おっとりとやさしい瞳は、 人間の時の姿とも寸分たがう事がない。
全身を包み込むようなオーラを受けて、 ルシアンの緊張が、 わずかに緩むも、
そのまま次の柵へ向かって歩いていく。
次は、 闇のような黒、 吸い込まれるような、 黒い毛並みと鬣の馬。
人間の時にもよくやる挑戦的なまなざしを向けている。
その姿に思わず、 ルシアンは噴出してしまいそうになるが、
なんとか我慢して、 次の柵へ。
その次には、 まだやっと仔馬から、 おとなの雌馬になろうとしている
銀色の鬣に灰色の毛並みを持つ馬。
さっきの馬とは対照的な引っ込み思案な様子をみせながらも、
しっかりとルシアンに自分のことをアピールしようとしている。
(シルビア様、 エイミ ・ ・ ・ ・ ・ リーナちゃんまで ・ ・ ・ ・
セリスの言ったとおりだったな ・ ・ ・ ・ ・ )
まさか、 彼女たちがセリスの言っていたように、
自分に少なからず、 想いを寄せていた事に驚きながらも、
肝心の 「彼女」 がまだきていない事に、 ルシアンはあせりを覚えている。
(3 人の想いにも気がつかない、 鈍い僕には ・ ・ ・ 、 愛想つかされちゃったかな ・ ・ ・ 。)
城の厩舎が広いといっても、 もう奥の壁まで残りわずかしかない。
ダメだったかと、 肩を落としたルシアン。
「ブルヒヒヒーーーン!!!」
「!!!」
その声に、 ルシアンが全力で走り出す。
広い厩舎の奥。
聞き間違えるはずがない、 そして近づいていくルシアンの鼻腔に入ってきた匂いで
それは確信に変わる。
「ブルル、 ブルル。」
『遅かったわね』 ・ ・ ・ ・ とそう啼く彼女に、 ルシアンは思わず、 ゴメンと謝りながら、
彼女の綺麗な赤い鬣を撫でる。
チャームポイントのおさげをそのままにしている彼女に、
国民には、 見せられないような情けない顔で、
「来てくれなかったら、 正直どうしようかと思ったよ。」
『情けない顔 ・ ・ ・ 、 シャキッとしなさいとシャキッと ・ ・ ・ 。』
彼女の怒った啼き声も、 今のルシアンには、 何よりもうれしい。
思わず笑みがこぼれてしまう。
『もう ・ ・ ・ ・ 、 あたしはまだ、 馬具着けなくちゃいけないんだし、
早く行きましょうよ ・ ・ ・ ・ 。』
幸せの余韻に浸りすぎていて、 すっかり忘れていたが、
今日の本番は、 むしろこれからだ。
「ごめん、 そうだった ・ ・ ・ ・ 。」
そういいながらルシアンが柵を開けると
雌馬は、 ゆっくりと通路に体を出すとその姿に
「「「ヒヒーーーン!!!、 ブルル、 ヒヒーーーン!!!」」」
厩舎中の雌馬達が、 悲鳴と 『二頭』 を祝福する啼き声が、 重なって響くなか、
先ほどの三頭も、 ルシアンたちにおめでとうの 『嘶き』 をかけてくれる。
再び静まり厩舎が静まり返ったのは、 ルシアンたちが出て行ってしばらくしてからだった。
金色の鬣の白馬が、 前足を振り上げ立ち上がると
筋肉に覆われてた胸に脂肪の膨らみが生えてくる。
漆黒の馬の通った鼻筋が縮んで、
短くなり体毛が薄くなってしたから褐色の肌がみえてくる。
銀色の鬣に芦色の毛の馬の尖った耳が丸くなって、
尻尾が体の中に埋もれていく。
そこに現れたのは、
3 人のヌードモデルのごとき、 女の子たち。
「あーあ、 これだけの 『美馬』 がそろっているのに、 見向きもしないなんて ・ ・ ・ 。」
エイミーが、 あきれたようにそういった後、
「仕方ないですよ、 隊長さんの想いは、 ずっと 『あの馬』 さんだけだったんですから ・ ・ ・ 。」
リーナが、 寂しそうな顔をしながら、 言葉を搾り出すと、
「やっぱり、 お 『二頭』 の間には、 誰にも入る事の許されない強い絆があるんですね。」
しょうがないと、 笑顔を作りながらも、 どこか元気のないシルビアが後に続く。
「まったく、 『二頭』 とも素直じゃないんだから、 端から見てたって、 相思相愛なのが、
丸分かりなのに、 ぜんぜん気がついてないんだから ・ ・ ・ ・ ・
もーーー、 さっさと着替えて、 緊張しまくりの二人を冷やかしに行きましょ。」
ちょっと怒ったようにイライラしだすエイミー
「そうですね。失恋してしまったわたくし達のためにも、 お 『二頭』 には、
ちゃんと幸せになってもらわなくては困ります。
ほら、 リーナちゃんも笑って ・ ・ ・ 。」
「はい、 私も ・ ・ ・ がんばって、 隊長さんたちを応援します。」
そういって、 リーナも自分の服をとり、 袖を通す。
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 英雄とその婚約者に声援が送られる。
大盛況のうちに幕を下ろした式典。
日も暮れ、 闇色に染まった。厩舎のなかで、 ルシアンは、 愛馬の鞍と手綱を外す。
ルシアンの背よりも高い馬の背が縮みながら、
筋肉質の体が柔らかい人間の女性の姿に変身していく。
変身の時の汗を払うように、 体を揺さぶって現れたのは、
ルシアンの幼馴染の姿だった。
「はあああ、 疲れた。やっぱり、 式典て疲れるわね。」
一糸纏わぬ豊満な肉体をおしみなくさらすセリス。
「ありがとう、 セリス。」
にっこりと笑顔を作ったルシアン。
その笑顔にセリスは、 顔を真っ赤にしながら ・ ・ ・ ・ 。
「ひ、 卑怯よ、 あんなの ・ ・ ・ ・ きょ、 脅迫じゃない、
これであたしが来てあげなかったら、 あんた一生
一頭きりの寂しい人生を送るから ・ ・ ・ ・ ・ 。」
そういいかけて
「ごめん、 素直になるって決めてたのに、
あたし、 なかなか素直になれなくて ・ ・ ・ ・ 。」
言いかけたセリスの口に人差し指を当ててとめるルシアン。
「いいんだよ、 それに、 僕の方こそ、 まだ君に言っていない事があるから ・ ・ ・ 。
セリス ・ ・ ・ ・ 愛してるよ。」
「あ、 あたしも、 あたしもルシアンの事が、 好き、 大好きなの!!!」
愛しい彼女が必死に自分の気持ちを伝えようと、 声を荒げていう。
そんな彼女を両腕でやさしくルシアンは抱きしめた。
「やっと名前で呼んでくれた。」
「ごめん、 あの時 ・ ・ ・ あたし、 ルシアンに 「おとこ女」 って言われて
あたし、 大好きなルシアンに女の子として
見てもらえてないんだって思ってそれで ・ ・ ・ ・ 」
「僕だって、 いつも一緒に居てくれてたセリスに、
男の子として見られていないんだと思って、
それで、 落ち込んだんだよ。」
「なんか、 ずっと 『あんた』 って言ってたら、
なんだか、 ルシアンって呼ぶのがだんだん怖くなってきて、
また嫌われたらどうしようとか、 いつもそんなことばかり考えた。」
「そうだったんだ。」
「それに、 あなたに久しぶりに会って
昔よりもたくましくなってるのにビックリして ・ ・ ・ でも
ルシアンがあたしの事覚えていないって分かった時、
あたし、 ショックで ・ ・ ・ ・ ずっと自分の部屋で泣いてたんだから ・ ・ ・ ・ 。」
「え?、 じゃあ、 あの時、 ずっと口利いてくれなかったり、
呼びにいっても、 すぐに出てきてくれなかたのは ・ ・ ・ ・ ・ 」
「泣きはらした顔をあんたに見られたくなかったに決まってるでしょ。!!!」
・ ・ ・ それを知ったら、 あんたやさしいから、 心配してくれるでしょ。
迷惑かけたくなかったのよ。」
「部隊に配属されて、 いろんな娘が、 あなたの事好きなのがよく分かって ・ ・ ・ ・ ・
みんな綺麗で、 魅力的だからあたしの事なんて、
ルシアンは見てくれないってそう思ってた」
「そんなことない!、 セリスは綺麗だし、 とても魅力的な女の子だよ!!!」
「ルシアン ・ ・ ・ 。」
「僕だって、 あの時セリスの事、 忘れてたわけじゃない。
ただ、 セリスがあんまりに綺麗になってたから、 その ・ ・ ・ 動揺しちゃって ・ ・ ・ ・ 。」
「そうなの?」
「僕だって、 セリスに嫌われたと思ってすごくショックだったんだ。
だから、 ・ ・ ・ ・ 」
そんなルシアンの姿にセリスはクスリと笑って、
「なんか、 あたし達ってだたちょっとすれ違ってただけだったんだね。」
セリスが、 目じりに溜まった雫を拭ってそういうと
ルシアンは、 いっそう強くセリスの肩を抱いて
「そうだね ・ ・ ・ ・ 。でも、 僕はなんだかそういうのも、 どうでもよくなっちゃったよ。
だって、 セリスが僕のそばにいてくれるんだもの ・ ・ ・ 。」
わらの上に手をついたルシアンの腕が力強く変化していき、
全身を黒毛が覆い、 鼻面が前に突き出していく。
「ルシアン ・ ・ ・ ・ ・ 。」
変わっていくルシアンと同じように馬の姿に戻るセリス。
二頭の馬がお互いによりそい、 長い首をこすり合せてお互いに愛情を表現する
愛する二頭の時間を邪魔するものはなく、
幸せそうな馬たちの鳴き声が、 いつまでも厩舎中に広がっていった。